『ソース・プリンシプル』理解の大前提、第4弾。
「その1」では、『Work with Source』著者であり、JUNKANメンバーであるトム・ニクソン氏(以下、トム)とのコラボレーション記事として、「Sourceという言葉の意味」と「なぜ、Principleという言葉を選んだのか?なぜ、Theory(理論)という言葉ではなかったのか?」について記載しました。
(『ティール組織』と『ソース・プリンシプル』、『Work with Source』の関係については、その1の記事をご参照下さい)
「その2」では、トムへのインタビュー形式で『Work with Source』やその土台となる考え方の「ソース・プリンシプル(Source Principles)」を学ぶ前に、読者の私たちが備えておくと良い「思考態度や姿勢」について記載しました。
「その3」では、トムへのインタビュー形式で「ソース・プリンシプル(Source Principles)」の実践書である『Work with Source』のタイトルに著者のトムが込めた想いについて、また、ソース・プリンシプルの考案者のピーター(Peter Koenig)による、「ソースという言葉の由来」についてピーターの公開動画をもとに記載しました。
4回目となる今回は、『Work with Source』のサブタイトルである「Realise Big Ideas, Organise For Emergence And Work Artfully With Money」の「“Big Ideas” に込めた想い」&「Big Ideas と ”強い利己的な思い” のヘルシーな関係 」について、恒例のインタビュー形式でトムにお聴きしています。ぜひ、学びの参考にして頂けたらと思います。
1. 『Work with Source』のサブタイトルである「Realise Big Ideas,Organise For Emergence And Work Artfully With Money」の「Big Ideas」に込めた想いは何ですか?
史郎:トム、今回は、サブタイトル中の「Realise Big Ideas」の “Big Ideas” に込めた意味をお聴きできたらと思っています。どんな想いがありますか?
トム:僕がこの本を通じて、興味があったことは、アイデアを通じて、大きくてポジティブな変化を世界に起こしたい人達を、サポートすることだったんだ。そういう人たち、例えば、創業者たちは野心があって、人々が影響を受けるような世界のシステム自体に、何らかの価値のある変化を生み出していこうと考えている。主に、そういう何か大きな変化を起こしたい人やそういう取り組みに関わる人達に向けて、この本を書いてみようと思ったんだ。
トム:もちろん、ソースプリンシプル自体は、小さいイニシアチブも含んでいる。例えば、お腹が減っているときに「何を食べようか?」という、比較的小さなイニシアチブもある。この時、ソースである自分自身には、確かに、このイニシアチブを進めるレスポンシビリティ(意思決定をして行動すること)がある。こういう場面でも、もちろん活用してほしい。
トム:ただ、関係者が1人を超えて、10人、100人、1,000人と次第に、大きなイニシアチブになってくると、もっと多くの人が関わってくるため、ソースプリンシプルの考え方が1人の時以上に重要となってくるんだ。イニシアチブを始めたソースが「*ソースの役割」を理解して、より多くの人が関わるイニシアチブを実行していく。そういう時にこそ、ソースプリンシプルをぜひ活かして欲しいという想いがあったよ。そのため、Big Ideasという言葉を使ったよ。
「*ソースの役割」:詳しくは基本編②をご覧ください。
史郎:そういう想いがあったんだね。トム、ありがとう!
史郎:トム、関連した質問なんだけど、もし「Big ideas」が「たくさんお金儲けをしたい!」というような「強い利己的な思い」から生まれている場合、トムはどのように考えますか?
トム:とても興味深い質問をありがとう。とても興味があるトピックだよ。まず、僕自身の考えとしては、優子がソースである「循環畑」の土の中で、植物の菌糸ネットワークが相互に繋がりあっているように、本当は、「人間もみんな繋がりあっている」という考えがあるよ。実際に人間の身体には多くの微生物が棲んでいるよね。つまり、「個人が全体と分離して、独立して存在している」という考え方は、人間社会が作り出した幻想だと思っている。
トム:しかし、残念だけど、大人になるにつれて、一般的には「個人が全体と分離して、独立して存在している」という捉え方が主流となってくる。このことが上記のような「強い利己的な思い」を生む背景でもあると思っている。本当は本の中で書いている「*愛」がそうであるように、「地球上のすべては繋がり合って生きている」のだけど。
トムが考える「*愛」:詳しくは基本編②をご覧ください。
史郎:そう思います。現代社会では人間の「強い利己的な思い」が拡大され、ストップが効きにくい構造があるように思います。それらが、お金とのヘルシーではない関係を生み、土壌や気候問題への対応が劣後してしまっているとも感じています。
トム:そうだよね。少し話は戻るけど、一方で「強い利己的な思い」を悪者扱いして、しっかりと扱わずに取り除いてしまおうとすることは、もちろん、健全ではないと思っているよ。なぜなら、「利己的な思い」は、人として自然のものだと思っているから。例えば「私は腹が減ったからこれが食べたい!」等のように、自分の欲求を感じることはとても大切だと思う。
史郎:そうですね。欲求自体を自覚をすることで、健全に扱うことが可能となりますね。
トム:そうなんだ。つまり「強い利己的な思い」に乗っ取られてしまうのではなく、また、既に超越したものとして軽視するのでもなく、背景にある「個人が全体と分離して存在している」という認識を自覚しつつ、「すべては繋がりあって生きている」という思いも、統合しながら生きていくことが大切だと考えているよ。これが「強い利己的な思い」とのヘルシーなリレーションシップだと思っている。
史郎:そうですよね。「強い利己的な思い」を自分は超越したと考えてしまうと、「強い利己的な思い」に蓋をしてしまうことで、それらがシャドウとなり、無自覚なシャドウの暴走を招くリスクもありますよね。
トム:そうなんだ。
史郎:トムが冒頭に伝えてくれた、「相互に繋がりあっている菌糸ネットワーク」の例は「すべてが繋がりあって生きている」ことを認識する上で重要になってきますね。
トム:そうなんだ。「個人の思い」と「全体との繋がり」については、史郎のZoomの背景写真の大きなレタスを例にして、伝えることもできる。もちろん、それは1つのレタスだとも見えるよね。だから、例えば「レタスに今、何が必要なんだろう?」と考えることもできる。
トム:ただ同時に「レタスという個体が全体と分離して、独立して存在している」のではなく、本当は、優子が「循環畑」を通じて教えてくれたように、レタスは「土壌の菌糸ネットワークと共に存在している」と考えることもできるよね。この二つの視点を統合的に扱っていくことがヘルシーだと思っている。
史郎:トムが言ってくれたように、土壌を通じて「全体との繋がり(愛)」を回復することができれば、「強い利己的な思い」も統合的に扱うことができ、少しずつ緩和できる可能性があると思っています。
トム:そうなんだ。
優子:現代社会で、すべての「いのち」の始まりである土壌の下を見ることを、あまり重視していないのはとても残念なことだと思っています。
トム:「そうなんだ!」とても残念なことだよ。
優子:土壌の下には、私たち人類がどのように生きていくべきか、多くのヒントに溢れています。
トム:本当にそうだよ!
史郎:本当にそう思います。トム、今回は「Big Ideas」と関連した「強い利己的な思い」を扱う際の視点を、自然と繋げながら伝えてくれてありがとう!とても学びの多い時間でした。
★「ソースとは?」「アイデアとイニシアチブとは?」「スペシフィックソースとは?」などの基本的な用語については、こちらの基本編①に整理されています。