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ティール組織とは?実務的視点から見る3要点と5過程

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みなさんの中には「ティール組織(進化型組織)のことを聞いたものの、一体どんな組織なのかな?」あるいは「本を読んでみたけど、イマイチつかみ切れないなぁ」と感じている方もいらっしゃることと思います。

ティール組織とは、思い切って一言で言うと、「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて進むことが出来ている、独自の工夫に溢れた組織」のことです。

実は、世界にはザッポス(アメリカ:Eコマース)やビュートゾルフ(オランダ:訪問介護)等をはじめとして、既にそういった組織が実際に増えてきており、成果(顧客満足、売上・利益等)も上げています。

そこで、今回は「ティール組織とは?3つのエッセンスの基本を実務的に丁寧に解説!」と題して、ティール組織のエッセンスを、私の実務経験を踏まえて、出来るだけ実務を意識して、お伝えさせて頂きます。ぜひ、この記事を読んで、ティール組織への理解を深めて頂けましたら幸いです。

実務的に、ティール組織のエッセンスを掴みたい個人の皆さまや法人様向けにも、参考になるかと思います。

尚、記載に際しては、フレデリック・ラルー氏が2014年に出版した「Reinventing Organizations(英語版)」及び、ラルー氏と共に活動をした仲間達や実践家へのヒアリングと、自社にて、ティール組織の原理を実践し続ける中で見えてきた知見をベースにしています。
ラルー氏の著書については、邦訳版「ティール組織(英治出版 2018年1月24日)」も販売されます。
また、本記事の末尾に、ティール組織について参考となる情報を記載しています

1章 ティール組織とは?

一言で言うと、「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて進むことが出来ている、独自の工夫に溢れた組織」のことであり、実は、世界にはザッポス等をはじめとして、既にそういった組織が実際に増えてきており、成果(顧客満足、売上・利益等)を上げている現状があります。

フレデリック・ラルー氏は本の中で、ティール組織のエッセンス(ブレークスルー)を3つ挙げています。まずは、この3つのブレークスルーがティール組織を理解する上で大切です。

  • 進化する組織の目的
  • セルフマネジメント(が機能している構造や仕組みを有している組織)
  • ホールネス(個人としての全体性の発揮)

ティール組織については、詳しくは7章で後述しますが、実は、ティール組織が生まれた経緯を知ることで、上記のエッセンスの理解を深めることができます。

2章では、ティール組織に至るまでの過程を、ラルー氏の本等をもとに分かりやすく記載しています。

2章 ティール組織に至るまでの5つの過程

下記の五重の円は、ティール組織に至るまでの過程を、組織運営及び経営に関する進化の視点で示しています。
ラルー氏は、それぞれの段階に色とメタファーを付けて、著書で説明をしています。色は、レッド、琥珀(コハク)、オレンジ、グリーン、ティールの5段階になっています。

色分け自体は、ケン・ウィルバー氏のインテグラル理論に基づいており、意識の進化の段階を色付けしています。(インテグラル理論については、ウィルバー氏の著書「インテグラル理論(日本能率協会マネジメントセンター2019年6月15日)」及び「インテグラル・ジャパン」をご参考下さい)

ポイントは、ティール組織がレッド組織以降の組織の進化を内包していることです。決して、突然変異的に生まれたものではなく、進化の過程で必要なものを組み込んだ結果、ティール組織が生まれているということです。
以下では、それぞれの段階でのエッセンスを、順を追ってお伝えします。

▼組織経営の進化形態(色、メタファー、経営的特徴)

3章 RED(レッド)組織とは?

レッド組織のメタファーはオオカミの群れです。組織運営の特徴としては、特定の個人の力によって支配的に運営するスタイルとなります。

力のある人が全てを支配する組織運営になります。力が重要であり、力に従属することで構成員は安心を得ることができます。時間軸としては、中長期的というよりは、短期的思考の傾向があり、今日明日、どう組織として生き抜いていくかに焦点が当たっています。力のある人の影響が大きく、良い意味でも悪い意味でも依存している状態です。

4章 AMBER(琥珀・コハク)組織とは?

コハク組織のメタファーは軍隊です。組織運営の特徴としては、上意下達で厳格な社会的な階級に基づくヒエラルキーによって情報管理を行い、指示命令系統が明確な状態で運営するスタイルです。

特定の個人への依存を、階級的ヒエラルキーに基づく役割分担によって、レッド組織よりも減らしています。そのため、多人数を統率することが可能になります。組織の安定性を計画的な統率により可能にするモデルのため、レッド組織よりも、対象としている時間軸も長く、長期的な展望や計画を重視します。ただ、変化や競争よりは、階級的ヒエラルキーが優先されている状態です。

5章 ORANGE(オレンジ)組織とは?

オレンジ組織のメタファーは機械です。組織運営の特徴としては、コハク組織のような厳格な社会的階級ではなく、社長や従業員等のヒエラルキーを持ちながら、成果を上げた従業員が評価を受け、出世することができる運営スタイルです。

コハク組織の時には、能力があっても階級により能力発揮に限度がありましたが、オレンジ組織によって、変化を歓迎し、競争が可能となり、イノベーションが生まれやすくなっていきます。数値管理によるマネジメントも重視しており、変化と競争に生き残ることが個人としても組織としても必須となります。そのため、人間でありながら、まるで機械のように働くことが生じ、人間としての幸せとは何かという原点回帰が生まれる契機にもなります。

6章 GREEN(グリーン)組織とは?

グリーン組織のメタファーは家族です。オレンジ組織同様、社長や従業員等のヒエラルキーを残すものの、オレンジ組織のように機械的な働き方ではなく、もっと人間らしく生まれ持った主体性が発揮され、個人個人の多様性が尊重されるような組織を目指す運営スタイルです。

社内メンバーの多様な意見を尊重し合い、お互いに思いやりを重視し、元気づけ合うことを大切にしています。
ただ、社長の権力が具体的にどのように組織内に分配されるかのルール等は無いため、メンバー間での合意形成に時間を要してしまうことや、合意形成が取れない場合に最終的に社長の意思決定に委ねること等が生じます。

このような制約はあるものの、グリーン組織では、オレンジ組織よりは、メンバーの意見も言いやすく、風通しの良い組織運営が可能となります。

7章 TEAL(ティール)組織とは?

いよいよティール組織です。メタファーは生命体です。
グリーン組織以前のように、組織が社長や株主のものではなく、一つの生命体であり、メンバーは生命体である「組織の目的(進化する組織の目的)」を実現し続けるために、共鳴しながら関わっていると捉えているのがティール組織の特徴です。

そのため、社長や管理職からの指示命令系統はなく、組織の進化する目的を実現するために、メンバー全員が信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら、目的実現のために、組織運営を行うというスタイルを取っています。
例えば、「組織がどこに行きたがっているのか?」を感じ、話し合う場を設ける等です。

7-1 1つ目のブレークスルー:進化する(組織の)目的

上述しましたように、ティール組織では組織の目的を、進化する目的(エボリューショナリーパーパス)としています。

なぜ、進化する目的なのでしょうか?

それは組織自体を、株主や社長の所有物ではなく、1つの存在、生命体と捉えているからです。生き物に生きる目的があるのと同じように、組織が生きているため、目的を有しているという発想です。

また、生き続ける中で、目的も進化していくため、進化する目的と表現されています。そのため、定期的に、「この組織はどこに行きたがっているのだろうか?」と互いに感じながら、話し合う場等が設けられている組織もあります。

7-2 2つの目のブレークスルー:セルフマネジメント

ティール組織では、社長や管理職からの指示命令系統はなく組織の進化する目的を実現するために、メンバー全員が信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら、組織運営を行うというスタイルを取っています。

このスタイルを実現するために、①情報の透明化(パフォーマンスや給料等含めたあらゆる情報)、②意思決定プロセスの権限委譲(個人の意思決定を尊重しながらも、組織的なフィードバックも届く)、③人事プロセスの明確化(採用・退職、給料決定のプロセスが独自に明確化されており、社長や役員等の個人的な権力が及びにくいようにされている)等を工夫しており、メンバー全員が真に主体的に関われる状態を実現しています。

メンバーやチームの成果プロセス行動もリアルタイムで見えるようになっており、メンバーやチームは、ダイエットに自発的に取り組むような形で、自分自身の成果やプロセス行動を自覚し、進化させる機会を組織内で有しています。こういった組織状態のこと(個人ではなく)を書籍では「セルフマネジメント(が機能している構造や仕組みを有している組織)」と記載しています。主な特徴として、①情報の透明化、②意思決定プロセスの権限委譲、③人事プロセスの明確化が体現されています。

7-3 3つ目のブレークスルー:ホールネス(個人としての全体性の発揮)

また、セルフマネジメントを組織的に、より有効に機能させるためにも、「メンバー全員の能力が存分に発揮されていることや、個人的な不安やメンバーとの関係性の上での気になること等に組織として寄り添うこと」がとても大切になってきます。このことを書籍では「ホールネス(個人としての全体性の発揮」と記載しています。

書籍で取り上げられているティール組織の中には、独自の取り組みや仕組みを工夫して、実践している組織もあります。例えば、相互の人間関係をよくするトレーニングや、意見や感情の相違を扱うトレーニングです。また、個人が色々なタイプの仕事にチャレンジできるような工夫もされています。それによって、個人が多様な能力を発揮することが可能になります。

7-4 「いかにして権力を分配するか? 組織目的の実現に集中」

書籍では、上述した、「進化する目的」、「セルフマネジメント(が機能している構造や仕組みを有している組織)」、「ホールネス(個人としての全体性の発揮)」をティール組織の3つのブレークスルーとして記載しています。

3つのブレークスルーは、グリーン組織からの進化の過程で、「いかにして、権力を分配するか?」という問いに応えていく中でも生まれてくるものと理解しています。

冒頭に記載した、「ティール組織とは、社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて、進むことが出来ている独自の工夫に溢れた組織」の中の「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても」という部分は、この「権力分配の結果」です。
分配の結果、マイクロマネジメントではなく、組織の目的実現に全員が焦点を当てることが可能になります

また、「組織の目的実現に向けて、進むことが出来ている独自の工夫に溢れた組織」というのは、組織の「進化する目的」の実現に向けて、権力を分配しながら、「セルフマネジメント」が機能するための独自の工夫のもと、メンバーの「ホールネス(個人としての全体性の発揮」を大切にしている結果、生まれてくるものと考えています。

7-5 ティール組織の2つの形態

ラルー氏の書籍で取り上げられているティール組織は、例えば以下のような組織があります。
上記の組織は、その形態的な特徴から、大きく二分することも出来るようです。

1つ目は、社長や役員等の役職は若干残しながらも、社長や役員等が持っている権力が経営上、影響しにくい工夫を施している形態です。
特に、上述した「セルフマネジメント」の内容である、①情報の透明化②意思決定プロセスの権限委譲、③人事プロセスの明確化が特徴的です。

2つ目は、社内上ではありますが、社長や役員等の役職自体を持たずに、上記①~③を実現しながら、運営されている形態です。
ラルー氏の書籍では、この2つ目の形態を実現するための具体的な例として、Holacracy One(ホラクラシーワン)が提供しているHolacracy(ホラクラシー)という方法が紹介されています(ホラクラシーについては、こちらの記事をご参考にして下さい)

8章 まとめ

以上、まずは、ラルー氏の書籍「Reinventing Organizations(英語版)」で触れられているティール組織に至るまでの5つの過程レッド、コハク、オレンジ、グリーン、ティール)について、出来るだけ実務的な視点でお伝えして参りました。

また、ティール組織については、「進化する目的」を軸におきながら、「セルフマネジメント(が機能している構造や仕組みを有している組織)」、「ホールネス(個人としての全体性の発揮)」といった3つのブレークスルーのエッセンスをお伝えしました。
「いかにして、権力を分配するか?」という問いから生まれているという視点も大切にして頂くことで、それぞれのブレークスルー同士の繋がりも感じて頂けていれば幸いです。

実践におきましては、弊社も弊社クライアントもそうですが、一足飛びにティール組織に進化というよりは、今ある組織の特徴を十分に理解した上で、経営状況に応じて方法を選択できるように、実践の中で、選択肢を進化させ続けることが肝要であると感じています。

また、読者の皆さまにとって、参考となる主な海外の情報を以下に記載しています。
・ラルー氏達の実践知見等を集約:「Reinventing Organizations
・ティール組織の実践家が集まり、探求するギャザリング:「Next Stage World」(2016年9月開始)(ギリシャで年に2回開催。執筆者の所属企業も協力団体となっています。執筆者も初回の2016年9月と2017年4月に参加)
・ティール組織の事例を中心とした記事メディア:「Enlievening Edge」(執筆者もメンバーとして所属。2017年1月に寄稿:「From Natural Farming to Natural Organizations(自然農法の叡智から自然組織を生み出す」)

・日本でも組織の進化に関するラーニングコミュニティ「オグラボ」(2016年10月開始)が活動をしており、多くの方と探求を進めています(執筆者も創設メンバーとして活動しています)
・より実務的な理解を深めたい方には、執筆者の方で出版させて頂いております、以下の本がご参考になるかと思います。『実務でつかむ!ティール組織  “成果も人も大切にする” 次世代型組織へのアプローチ

本記事が読者の皆さまのより良い組織経営づくりの一助となれば幸いです。

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コメント

  1. 伊藤武志 より:

    とても素晴らしい。わかりやすい。ありがとうございます!
    ご講演など、機会があれば教えていただきたいです。

    1. 吉原史郎 より:

      伊藤さま

      コメント、ありがとうございます。
      ティール組織に3年前に出会い共感し、以降、海外のティール組織や、自組織、クライアント企業様との実務実践を通じて、深め続けております。

      講演や実践的な学びの場等も東京・関西にて行っていますので、また、ご案内させて頂きます。
      伊藤さまと、一緒に学びを深められることを楽しみにしています。

  2. 近藤 より:

    いちスタッフから昇任し3年が経ちました。「こんな部署にしたい」という思いが、他部署の先輩管理職と少し違うなぁと悩んでおりました。私の考えが間違っているのであれば指摘してもらおうと直属の上司に打ち明けたところ、ティール組織と近い考え方だよと教えてもらい、今回記事に出会うことができました。
    私はまだまだ管理職としての経験が浅く、上司からの指導を受けながら日々業務を行っておりますが、いずれ組織を任された時にはティール組織のような管理を行いたいと思います。
    ありがとうございました。

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