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ホラクラシー組織(ティール組織の一形態)の3つの要点を簡単解説

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みなさんの中には「Holacracy(以下、ホラクラシー)の本を読んだけれど、もっと具体的に知りたい」あるいは、「ホラクラシーはルールが多すぎて実践に不向きでは?」と感じている方もいらっしゃることと思います。

この記事では、ホラクラシーの実践を通じて得た、ホラクラシー組織の経営上の要点を、ティール組織(フレデリック・ラルー氏の著書「Reinventing Organizations(英語版」で記載)との繋がりにも少し焦点を当てて、簡単に解説します。
※ラルー氏の著書については、邦訳版「ティール組織(英治出版 2018年1月24日)」も販売されます。

ホラクラシー組織とは、ラルー氏の著書によると、ティール組織の一つの具体的な形態であり、そのため、ティール組織の特徴である「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて、進むことが出来ている独自の工夫に溢れた組織」を体現している組織となります。
ティール組織については、こちらの記事に記載していますのでご参照下さい。

ホラクラシー組織の代表的な事例として、ザッポス(アメリカ:Eコマース)という会社が挙げられます。ホラクラシー導入後、一時期の転換期を越えて、ホラクラシーが浸透し、十分に機能させているのが今のザッポスです。

それでは、ホラクラシー組織では、一体、どういう組織経営がされているのでしょうか?
その基本の要点に迫るべく、今回は「ホラクラシー組織(ティール組織の一形態)の3つの要点を簡単解説」と題して、私自身の国内外のホラクラシー組織での経験や学びに加えて、日本企業である弊社での取り組み経験を踏まえた内容を記載しています。

尚、記載に際しては、ブライアン・ロバートソン氏が2014年に出版した「Holacracy(英語版)」及び、ブライアン・ロバートソン氏と共に初期からホラクラシーの実践活動を行った仲間達へのヒアリングをベースにしています。
さらに、自社にて、ホラクラシーを導入しながら経営を実践する中で見えてきた知見も加えています。

本記事により、ホラクラシー組織の要点を読者の皆さまにお伝え出来ること、及び、ホラクラシー組織に興味のある企業様にとって、本記事がその入り口となれば幸いです。

また、本記事の基本要点の応用的な内容である以下の観点は別の記事で記載していく予定です。
・ホラクラシー組織の潤滑油としてのテンションの種類と扱い方の実際
・ホラクラシー組織の組織目的と個人の目的とが共鳴し合うための取り組みの実際
・ホラクラシー組織の構造と運営面の詳細
・ホラクラシー組織になる前に、実施しておいた方がいいこと(プレクラシー支援)の実際
・ホラクラシー組織での活動から感じた現場の声 ①株式会社での事例 ②NPOでの事例

1章 Holacracy(ホラクラシー)組織とは

まず、Holacracy(ホラクラシー)とは何でしょうか?

Holacracy(ホラクラシー)とは、ホラクラシー・ワン社のブライアン・ロバートソン氏、トム・トミソン氏が2007年に開発した、組織経営の新しい方法です。
ホラクラシーによって、実現できる組織は、一文で言いますと、「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて、進むことが出来ている独自の工夫に溢れた組織」となります。
特に、マイクロマネジメントを手放すことで、組織目的の実現にメンバー全員が焦点を当て続けることができるのが特徴です

ホラクラシー組織は、ティール組織の一形態でもあるため、この記事では実現できる組織を同じ文言で書いています。また、ホラクラシー組織は、ティール組織の1つの形態であるため、そのことにも、少し触れておきます。

ティール組織には大きく、次の2つの形態があります。1つ目は、社長や役員等の役職は若干残しながらも、社長や役員等が持っている権力が経営上、影響しにくい工夫を施している形態です。
特に「セルフマネジメント」の内容である、①情報の透明化、②意思決定プロセスの権限委譲、③人事プロセスの明確化が特徴的です。

2つ目は、社内上ではありますが、社長や役員等の役職自体を持たずにティール組織が実現され、運営されている形態です。
ホラクラシー組織は、2つ目の形態に該当します。つまり、社長や役員等の役職自体を持たずに、組織が目的実現に向けて、進むことが出来ている機能を有していることが特徴です。
1つ目の形態よりも、明確にヒロイックリーダーシップ(特定の方の影響力が高いリーダーシップスタイル)が働かないようにして、進化する組織の目的をボスにすることに力点があることも特筆すべき内容です

では、いかにして、ホラクラシー組織では、それを実現しているのでしょうか?
2章では、ホラクラシー組織の3つの要点を通じて、理解を深めて頂きます。

2章 ホラクラシー組織の3つの要点

ホラクラシー組織の3つの要点は以下となります。
1)進化する組織の目的
2)目的を実現するための進化し続ける組織構造 ~「権力の分配」~
3)セルフマネジメントを実現する運営形態

ホラクラシー組織では、組織運営のための、目的・構造・運営の仕方の3点に特徴があります。加えて、土台となる約束事の上で、自由に独創的に新たな取り組みを生み出すことが可能になります。

この土台となる約束事は、スポーツのやり方であるルールと同じで、プレイしながら体得していくことを大切にしています。

例えば、サッカールールだけ見て、ルールを覚えようとしてもサッカーの魅力が分かることはないのと同様で、ホラクラシーもその土台となる約束事だけを見ても、全くワクワクしないし、退屈な気持ちになります。
そのため、ホラクラシーでは、まずはやってみることプラクティスを重視しています。

オランダやアメリカ等で、ホラクラシー・ワン社が開催しているホラクラシーのトレーニングセッションに執筆者が以前参加した際にも、真っ先に模擬会社での運営ワークから始まりました。
ほぼルールが分からないまま、言われるままにプラクティスを行い、不思議と慣れてきて、4日後には大体のことがしっくりと来るようになっていました。
5日目の最終日に、約束事を確認した際には、すっと骨子が腹落ちしました。

当然、細かな約束事の確認は残りましたが、それはプラクティスを続ける中で、サッカーでいう所のレフリー(ホラクラシーではトレーニングを受けたファシリテーター)によって、解決することができました。

サッカーをプレイする中大きなルールが分かり、細かなルールは継続的に取り組む中で、一歩一歩、自分のものになってくるのと似ていると思います。

サッカーをする前にルールを読んでも、実際の経験値がなければ、「そもそもスポーツとして成り立つのかな?」や「身体的に危険すぎないかな?」等という問いが生まれてくるのと似ているかと思いますし、その疑問はとても自然なことであり、前に進めてくれる問いであるとも思います。

3章 要点①進化する組織の目的

それでは、1つ目の要点である「進化する組織の目的」を考えていきたいと思います。
ホラクラシー組織において、組織の目的を考える際には、「この組織が存在として、生命体として、本当に最大限に可能性が発揮されている時に、どういうことで世界に貢献したいだろうか?」等を考えます。
組織の目的は存在として、生命体としての組織自体に宿っているため、目的自体も進化し続けるものと捉えています。

ホラクラシー組織では、組織内に社長等の役職者がいないため、組織が社長の所有物という意識は育まれること自体がなく、ただ生命体として組織が存在し続けています。
この特徴は、ティール組織の中でも、ホラクラシー組織において、より顕著であると思います。
ホラクラシーを導入し、移行期での日々の取り組み(プラクティス)(別記事にて記載予定)を経る中で、一歩一歩、このような意識を育んでいくことが可能となります。

【実践メモ:進化する組織の目的を考える際の問いの例】
・この組織の可能性が最大限に発揮された時に、この組織が世界に貢献したいことは何ですか?
・世界がこの組織に実現して欲しいと渇望していることは何ですか?
・もし、世界からこの組織が失われてしまったら、世界は何を失ってしまったことになりますか?
(弊社:Natural Organizaitions Labでは、事業上の特徴から、世界を地球に置き換え、以下の4つ目の問いも大切にしています)
・地球が自らの歩みを振り返った時に、NOLは地球に何を残したと言ってもらえる存在なのだろうか?

4章 要点②目的を実現するための進化し続ける組織構造 ~「権力の分配」~

それでは、2つ目の要点である、「目的を実現するための進化し続ける組織構造」を考えていきたいと思います。
最大の特徴は、1つ目の要点である「組織の進化する目的を実現するために必要となる業務上の役割(以下、ロールと呼びます)を作り、更新し続けられる独自のプロセスを有することで、現実の組織構造を常に最適にすることができるということがあります

全ての役割を作る際に、組織の進化する目的を実現する上で、役割がどのように貢献できるか、つまり、役割自体の目的も設定します。役割自体に目的があることで、組織構造を、組織の目的実現をもとに形作っていくことが可能になります

では、ホラクラシー組織においては、組織構造をどのように作り、進化させ続けることが可能なのでしょうか?それを考える前に、ホラクラシー組織での初期構造の説明をさせて頂きます

4-1 初期構造の設定

ホラクラシー組織における、初期の組織構造は以下となります

・上記の「ゼネラルサークル」とは対象となるホラクラシー組織全体を示しています
・上記の「リードリンク」、「ファシリテーター」、「セクレタリー」とは、初期に設定されているロール(役割)です。ロールとは組織の目的を実現するために必要となる、特定の仕事の集合を意味しています
・初期に設定されているロール以外に、目的実現のために必要なロールを、誰もが提案し、ホラクラシー組織独自のプロセス(後述)を経てロール化することができます。一度決まったロールの見直しもすることができます

【実践メモ:初期設定時のロールの概略】
全てのロールに「ロールの名前」、「ロールの目的(ロールが実現したい最高の状態)」、「ロールが継続的に取り組む業務(以下、アカウンタビリティ)」を設定します

初期設定ロール①:【リードリンク
組織の目的実現を果たしている
・目的実現のための戦略(方向性)及び重要指標を示している
・方向性により、優先順位を示している(示し方:AよりBを重視という形式)
・組織メンバーのアサインを行っている(能力や希望等を勘案しながら)
・投資資金の配賦を行っている 等

給与や賞与の決定等のアカウンタビリティはリードリンクにはなくロールを設定する必要があります。
例えば、給与賞与ロール等を設定することがあります。

(給与賞与ロールの目的、継続的に取り組む業務を設定した上で、)給与賞与ロールにおいて、例えば、どのような方法で給与賞与を決定するのか(市場相場で決める、業務にポイントを割り振るプログラムの開発等)を考えて実施することができる等を設定することが出来ます

給与賞与ロールが定めた給与賞与プログラムについて、感じたことや意見(テンションという。テンションについては後述)を出すことができ、常にプログラムが進化し続ける機会を組織として、伝える仕組みをホラクラシー組織では有しています

初期設定ロール②:【ファシリテーター】
・ミーティングのファシリテーションを行っている 等
初期設定ロール③:【セクレタリー】
・ミーティングの開催案内をしている
・ミーティングの記録を取っている 等

4-2 組織構造が進化し続けるための独自のプロセス

それでは、ホラクラシー組織においては、初期に設定されているロール以外に、どのようなプロセスで、目的実現のために必要なロールを提案し、更新し続けているのでしょうか

ホラクラシー組織では、「ガバナンスミーティング」というミーティングにおいて、それらを可能にしています。
ガバナンスミーティングの目的は、「ロールの新規追加、ロールの見直し、組織の進化する目的の更新等を行うこと」にあります。組織内の誰もが提案することができます。グラスフロッグというアプリケーションを使うことで、このミーティングプロセスを効果的に進めることが可能になります。ガバナンスミーティングは基本的には、毎月1回、実施し、ファシリテーターロールが進行します

4-3 ガバナンスミーティングの進め方の概略(詳細は別記事にて記載予定)

1)提案内容の募集
(誰もがロールについて提案可能)
2)提案内容の明確化
(内容自体を理解することを目的として、他のメンバーが提案者に質問)
3)提案内容へのリアクション
(他のメンバーから、提案自体への意見(賛成、反対等)を提案者に伝達。話し合いは行わない)
4)提案者による提案内容への加筆修正
(他のメンバーからの質問や意見等を受けて、必要に応じて実施。話し合いは行わない)

5)反対ラウンド
(提案内容によって、組織に損害が生まれ、組織が目的実現に対して後退するのであれば、独自の手順を経て反対意見として採用され、提案をブラシュアップする情報とします)
※反対意見として採用されない場合でも、提案者への新たな視点の提供になるため、反対意見はとても貴重です
6)統合ラウンド
(反対意見を勘案した提案内容に統合
7)決定(提案内容の採用)
※提案者は、プロセスの中で、いつでも提案内容を取り下げることも出来ます

4-4 提案内容の募集について

それでは、ガバナンスミーティング主な内容をお伝えします。まずは、提案内容の募集からです

提案は組織のメンバー、誰もが出来ます。提案する際には、まず、組織の目的実現と現状とのギャップを「テンション」という形で伝えることから始めます。テンションとは、組織が成長することに繋がる機会として捉えていて、そのため、問題という言葉を使っていない背景があります。

具体的には、誰もが、「こういうロールがあったらいいのでは?」や「このロールをこのように見直したらいいのでは?」等のテンションを挙げることで、提案することができます。テンションの背景には、提案者が持っているニーズがあります。提案者のテンションに寄り添うことで、ニーズを実現することを大切にしています。そのため、ホラクラシー組織の1つの特徴として、テンションに寄り添うプロセスを有していることを挙げることが出来ます。

尚、提案した人が提案したロールを担当する必要はありません。ロールへのメンバーの割り当て(アサイン)は、リードリンクがロール自体の優先順位や、メンバーの能力及び希望等を勘案して実施します

4-5 提案者のテンションに寄り添い、提案を磨く

提案が出た後のプロセスで大切なことは、提案者のテンションに寄り添い、他のメンバーからの質問や意見を通じて、提案者自身が提案内容を磨くことが出来る時間を取るということです。
このような時間を取ることで、提案者の整理にもなりますし、他のメンバーも提案内容自体を理解し、提案者に新たな視点を提供することも可能になります

その上で、以下の反対ラウンドに移ります。反対意見とは、提案内容によって、組織に損害が生まれ、組織が目的実現に対して後退する内容を指しています。反対意見という表記ではありますが、意図としては、提案内容を異なる視点からブラシュアップするための情報と捉えています。以下に進め方の概略を記載しています。

4-6 反対ラウンド 「新たな視点の提供」

反対ラウンドでは、提案自体が組織に損害を及ぼすか、組織を後退させるか否かに焦点があたっています。そのため、損害もなく、後退させる理由もない提案は、基本的には可決され、進めていくことが可能となります。発想としては、アジャイル開発の発想に似ていると思います(ホラクラシーの開発者であるブライアン・ロバートソン氏がアジャイル開発の専門家であったことも影響していると思料)。

進め方としては、まずは反対意見がある方は、内容を伝えることができます。その後、反対意見が、反対意見として成立するかどうかを、ファシリテーターが、反対意見を伝えてくれた方に、独自に定められた手順(プロセス)に沿って質問をしていきます(詳細は別記事にて記載予定)。

4-7 統合ラウンド 「提案者のニーズに沿った新たな視点の勘案」

反対意見が採用された際には、反対の内容を勘案した統合案を、反対意見を出した人が作成します。
統合案が依然として提案者のテンション、ニーズに沿っていることを確認の上統合案自体が提案内容となり、再度、反対ラウンドを行います。
(採用された=反対意見として成立した)反対意見がなければ、提案内容の採択となり、新たなロールの設定や見直し等が完了します。
新たなロールの設定がされた場合、グラスフロッグのシステムでは、以下のように、サークル内に新しいロールが作成されます。1つの提案で1つのロールが作成され、最終的に6つのロールが作成されたケースです。
このようにして、組織構造自体が進化し続けていきます

5章 要点③セルフマネジメントを実現する運営形態

前章までで、ホラクラシー組織における、組織の目的と構造について、お伝えしてきました。ここからは、運営形態についてお伝えしていきます。運営開始前に必要なことを整理した上で、運営開始後の流れを記載しています

5-1 運営開始前に必要なこと

・組織の進化する目的の設定(3章にて記載)
・ロールの設定(4章にて記載)

・重要指標の設定(リードリンクのアカウンタビリティ)
組織の進化する目的を実現するために、重要となる指標を、ロールごとに設定します。設定はリードリンクが行いますが、他のロールも、リードリンクが設定した指標について、テンションとして情報共有や依頼事項(リクエスト)を出すことが可能です。
また、リードリンク指標を設定する際に、各ロールに重要な指標となることについて情報収集を行うことも可能です。
重要指標の例としては、売上等の数値や、顧客数提案数ウェブサイトのPV数等を挙げることができます。重要指標は週次、月次、四半期ごと等で設定します

設定したロールのプロジェクト設定
プロジェクトとは、ロールがロール自体の目的実現のために取り組む業務(アカウンタビリティ)を実行する中で生まれてくる、一定期間内で一定の成果を生み出す仕事のことを指しています。
1つのアクションで終わり、継続的ではないアクションネクストアクションと呼び、プロジェクトとは区別されています。プロジェクトは、2つ以上のアクションが必要となる仕事となります

設定したロールのチェックリスト作成
チェックリストでは、ロールがロール自体の目的実現のために取り組む業務(アカウンタビリティ)を実行する中で生まれてくる、継続的なルーティン業務を対象としています。例えば、請求書発行やメーリングリストへの毎週の投稿等が該当しています

 

5-2 運営開始後の流れ

運営開始後は、毎週一回(基本)タクティカルミーティング(後述)日々の業務時に、ロールとテンションを意識して取り組むことが、とても重要になっています。
タクティカルミーティングでは、ロールごとのアクションやプロジェクトのベクトル合わせを目的にしています。

また、導入初期にはロールを意識したコミュニケーション(ロールコミュニケーション)に慣れることが大切であるため、タクティカルミーティングが有用な機会になります。日々の業務においても、社内のメールで例えば、どのロールから、どのロールへのメールであるのかも明確にしておくことが重要になります。

5-3 タクティカルミーティングの概略(詳細は別記事で記載します)

ガバナンスミーティング同様、ファシリテーターが進行します。主な内容は以下となります

チェックリストの共有(実施 or 未実施)
指標の最新情報の共有(最新指標の共有)
プロジェクトの進捗状況の共有(前回のタクティカルミーティングからの進捗の共有)
ロール同士のベクトル合わせの実施(プロジェクトやネクストアクション等)

5-4 ロール同士のベクトル合わせの実施

メンバーがテンション(目的実現と現状とのギャップ)を出すことから始めます。
テンションとしては、例えば、「営業」ロールから「マーケティング」ロールに、マーケティングパンフレットに載せる内容の打ち合わせをしたいや、「営業」ロールから「顧客管理」ロールに、顧客リストを見せてほしい等があります。これらは、ロールからロールへの、ネクストアクションのリクエストになります。

同様に、例えば、「営業」ロールから「マーケティング」ロールに、価格表の作成をしてほしい等のリクエストをテンションとして挙げることもできます。これは、ロールからロールへのプロジェクトのリクエストになります

また、ロールの新規設定やロール内容の見直しに関するテンションも挙げることができ、ガバナンステンションと呼んでいます。
ガバナンステンションは、次回のガバナンスミーティングで扱うことができます。急ぎの場合は、「セクレタリー」ロールにガバナンス会議の開催をリクエストすることができます。
後は、サークルメンバーに、その場で簡単に情報を共有することや、ヘルプを依頼すること、不安や気がかりな事を共有することもできます

ファシリテーターは、テンションを出した方のテンションに寄り添い、ニーズを明確にすることが大切です。ファシリテーターは1つのテンションごとに、必要なものを聞いて、最後に必要なものが得られたかどうかを聞きます。必要なものが得られた場合、ファシリテーターは次のテンションを扱います

タクティカルミーティングで行う仕事内容のすり合わせ(ベクトル合わせ)は日常で実施できるので、タクティカルミーティングを待つ必要はなく、日常的に、ロールコミュニケーションとテンションに寄り添うことを実践し続けることが大切です

6章 導入に際してのステップ

ホラクラシーの要点を部分的に活用する場合と、ホラクラシーを経営に導入する場合があるかと思います。要点を活用する場合には、目的面、構造面、運営面での要点を組織の状況やニーズに応じて、部分活用される場合が多いです

以下では、ホラクラシーを経営に導入する場合について記載しています

導入する前段階では、上述した「セルフマネジメントが出来るための独自の組織的な工夫(①情報の透明化、②意思決定プロセスの権限委譲、③人事プロセスの明確化)」と「メンバーが自らの大切にしている目的と、組織の目的との繋がりを感じられるための取り組み」を、ある程度有していることが望ましいですし、ホラクラシーの導入の成功可能性を高めることが出来ます

弊社ではこの前段階の整備を、プレクラシー(ホラクラシー導入のための大切な準備の期間という意味を込めています)と呼んでおります。このプロセスを経ずにホラクラシーを導入することも可能ではありますが、改革する変数が増えてしまうため、実践の現場としては、プレクラシーを経てからの方が実務的な合理性が高いと感じています

プレクラシーを経て、ホラクラシーを経営に導入をされる際には、社長がホラクラシーの約束事が記載されている資料(ホラクラシーコンスティテューション)にサインをすることから始まります。サインをしたことで、社内的には、社長等の役職がなくなり、上述した初期ロールが設定されます。
また、社長は最初、多くの場合、リードリンクというロールを担当します

初期ロールが設定され、リードリンク、ファシリテーター、セクレタリーを決めた後は、上述した流れで、組織の進化する目的を設定し、構造としてのロールを作ります。
初期のロール既存の業務内容をベースに設定し、その後、ロールを更新し続けることになります。その後、リードリンクが他のメンバーのアサインを能力や希望に応じて行います

運営面では、タクティカルミーティングを活用して、ロール同士の会話(ロールコミュニケーション)とテンションに寄り添うことに慣れていくことが大切です。
ロールやプロジェクトが明確になり、加えて、これまで指標の見える化をしていなかった組織では、一気に多くの指標が見えるようになるため、最初は驚くことがあります

ただ、それは、ロールが現状を知り、次のアクションを取るために必要な情報のため、見える化できていることで、ロール自身のセルフマネジメントが可能となります。セルフマネジメントをさせるのではなく、誰もがセルフマネジメントが出来る組織にしていくことが肝要です

導入の規模感ですが、ザッポスについても最初は数十名規模から始めているため、小規模から開始することが望ましいです。それにより、組織の課題解決にマッチしているかの確認も取ることが可能になります

7章 まとめ

以上、できるだけ、実務経験に基づき、記載をしてまいりました。

ホラクラシー組織では、ティール組織の特徴である、「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて、進むことが出来ている独自の工夫に溢れた組織」を社長や役員等の役職自体を持たずに実現できる機能を有していることが特徴です。

そのことが、マイクロマネジメントを無くし、組織目的の実現にメンバー全員が焦点を当て続けることができることを可能にしています。

また、明確にヒロイックリーダーシップ(特定の方の影響力が高いリーダーシップスタイル)が働かない中で、進化する組織の目的の実現に向けて進んでいくことに力点があることもホラクラシー組織の特筆すべき内容です

世界では、約1,000社以上が導入をしているホラクラシーですが、日本ではこれからの取り組みになっています。小さな変化を繋げて、日本でも一歩ずつ丁寧に、新たな組織の選択肢として、育むことが出来ればと思っております。

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