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話題のティール組織・ホラクラシー組織の繋がりを実践的に徹底解説!

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「Natural Organizations Lab 株式会社」共同創業者の吉原史郎は日本初の「*ホラクラシーライセンス プロバイダー」です。
*「ホラクラシー」を開発したHolacracy One社のアセスメントで認定コーチになり、ライセンス契約を結んだ人が、ライセンスプロバイダーとして、「ホラクラシー」に関するサービスを提供することが”法的”に可能となります。

みなさんの中には、「ティール組織やホラクラシー組織という言葉を聞いたことがあるものの、両者の繋がりが不明慮であり、よく分からない」と感じている方もいらっしゃることと思います。

ティール組織とホラクラシー組織とは実は違うものではなく、ティール組織という考え方の中の具体的な一つの形態として、ホラクラシー組織があります。

ティール組織とは、思い切って一言で言うと、「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて、進むことが出来ている独自の工夫に溢れた組織」のことです。ティール組織には大きく、次の2つの形態があります。

1つ目は、社長や役員等の役職は若干残しながらも、社長や役員等が持っている権力が経営上、影響しにくい工夫を施している形態です。

2つ目は、社内上ではありますが、社長や役員等の役職自体を持たずに、上記の1つ目の形態と同様に、ティール組織が実現され、運営されている形態です。ホラクラシー組織は、2つ目の形態に該当します。

つまり、社長や役員等の役職自体を持たずに、組織が目的実現に向けて、進むことが出来ている機能を有していることが特徴です。

1つ目の形態よりも、明確にヒロイックリーダーシップ(特定の方の影響力が高いリーダーシップスタイル)が働かないようにして、例えるならば、特定の人ではなく、組織の目的自体が最も重要となっていることも特筆すべき内容です

このように、ティール組織の具体的な1つの形態としてホラクラシー組織があります。本記事では、ティール組織に至るまでの過程及びティール組織の3つの要点のご説明と、3つの要点がホラクラシー組織において、どのように活かされているのかに主眼を置いて、記載しています。

目次)
1章 ティール組織とは?
2章 ティール組織に至るまでの5つの過程
3章 各組織の特徴
 3-1 レッド組織とは?
 3-2 琥珀(コハク)組織とは?
 3-3 オレンジ組織とは?
 3-4 グリーン組織とは?
4章 ティール(青緑)組織とは?
5章 1つ目の要点:進化する(組織の)目的
 5-1 【ティール組織】での進化する(組織の)目的
 5-2 【ホラクラシー組織】での進化する(組織の)目的
6章 2つ目の要点:セルフマネジメント
 6-1 【ティール組織】でのセルフマネジメント
 6-2 【ホラクラシー組織】でのセルフマネジメント
 6-3 工夫① 組織構造自体を進化させ続けられること
 6-4 工夫② 業務運営上のベクトルを合わせやすいこと
7章 3つ目の要点:ホールネス(個人としての全体性の発揮)
 7-1 【ティール組織】でのホールネス
 7-2 【ホラクラシー組織】でのホールネス
8章 3つの要点の背景
9章 まとめ

1章 ティール組織とは?

一言で言うと、「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて進むことが出来ている、独自の工夫に溢れた組織」のことであり、実は、世界にはザッポス等をはじめとして、既にそういった組織が実際に増えてきており、成果(顧客満足、売上・利益等)を上げている現状があります。

フレデリック・ラルー氏は著書「Reinventing Organizations」(邦訳:ティール組織(英治出版))の中で、ティール組織の要点(ブレークスルー)を3つ挙げています。まずは、この3つのブレークスルーがティール組織を理解する上で大切です。

  • 進化する組織の目的
  • セルフマネジメント(が機能している構造や仕組みを有している組織)
  • ホールネス(個人としての全体性の発揮)

ティール組織については、詳しくは4章以降で後述しますが、実は、ティール組織が生まれた経緯を知ることで、上記の要点の理解を深めることができます。

2章では、ティール組織に至るまでの過程を、ラルー氏の本等をもとに分かりやすく記載しています。

2章 ティール組織に至るまでの5つの過程

下記の五重の円は、ティール組織に至るまでの過程を、組織運営及び経営に関する進化の視点で示しています。
ラルー氏は、それぞれの段階に色とメタファーを付けて、著書で説明をしています。色は、レッド、琥珀(コハク)、オレンジ、グリーン、ティールの5段階になっています。

色分け自体は、ケン・ウィルバー氏のインテグラル理論に基づいており、意識の進化の段階を色付けしています。(インテグラル理論については、ウィルバー氏の著書「万物の論理(トランスビュー2002年9月20日)」及び「インテグラル・ジャパン」をご参考下さい)

ポイントは、ティール組織がレッド組織以降の組織の進化を内包していることです。決して、突然変異的に生まれたものではなく、進化の過程で必要なものを組み込んだ結果、ティール組織が生まれているということです。
以下では、それぞれの段階での要点を、順を追ってお伝えします。

▼組織経営の進化形態(色、メタファー、経営的特徴)

3章 各組織の特徴

3-1 レッド組織とは?

レッド組織のメタファーはオオカミの群れです。組織運営の特徴としては、特定の個人の力によって支配的に運営するスタイルとなります。

力のある人が全てを支配する組織運営になります。力が重要であり、力に従属することで構成員は安心を得ることができます。時間軸としては、中長期的というよりは、短期的思考の傾向があり、今日明日、どう組織として生き抜いていくかに焦点が当たっています。

力のある人の影響が大きく、良い意味でも悪い意味でも依存している状態です。

3-2 琥珀(コハク)組織とは?

コハク組織のメタファーは軍隊です。組織運営の特徴としては、上意下達で厳格な社会的な階級に基づくヒエラルキーによって情報管理を行い、指示命令系統が明確な状態で運営するスタイルです。

特定の個人への依存を、階級的ヒエラルキーに基づく役割分担によって、レッド組織よりも減らしています。そのため、多人数を統率することが可能になります。組織の安定性を計画的な統率により可能にするモデルのため、レッド組織よりも、対象としている時間軸も長く、長期的な展望や計画を重視します。

ただ、変化や競争よりは、階級的ヒエラルキーが優先されている状態です。

3-3 オレンジ組織とは?

オレンジ組織のメタファーは機械です。組織運営の特徴としては、コハク組織のような厳格な社会的階級ではなく、社長や従業員等のヒエラルキーを持ちながら、成果を上げた従業員が評価を受け、出世することができる運営スタイルです。

コハク組織の時には、能力があっても階級により能力発揮に限度がありましたが、オレンジ組織によって、変化を歓迎し、競争が可能となり、イノベーションが生まれやすくなっていきます。数値管理によるマネジメントも重視しており、変化と競争に生き残ることが個人としても組織としても必須となります。

そのため、人間でありながら、まるで機械のように働くことが生じ、人間としての幸せとは何かという原点回帰が生まれる契機にもなります。

3-4 グリーン組織とは?

グリーン組織のメタファーは家族です。オレンジ組織同様、社長や従業員等のヒエラルキーを残すものの、オレンジ組織のように機械的な働き方ではなく、もっと人間らしく生まれ持った主体性が発揮され、個人個人の多様性が尊重されるような組織を目指す運営スタイルです。

社内メンバーの多様な意見を尊重し合い、お互いに思いやりを重視し、元気づけ合うことを大切にしています。
ただ、社長の権力が具体的にどのように組織内に分配されるかのルール等は無いため、メンバー間での合意形成に時間を要してしまうことや、合意形成が取れない場合に最終的に社長の意思決定に委ねること等が生じます。

このような制約はあるものの、グリーン組織では、オレンジ組織よりは、メンバーの意見も言いやすく、風通しの良い組織運営が可能となります。

4章 ティール(青緑)組織とは?

いよいよティール組織です。メタファーは生命体です。
グリーン組織以前のように、組織が社長や株主のものではなく、一つの生命体であり、メンバーは生命体である「組織の目的(進化する組織の目的)」を実現し続けるために、共鳴しながら関わっていると捉えているのがティール組織の特徴です。

そのため、社長や管理職からの指示命令系統はなく、組織の進化する目的を実現するために、メンバー全員が信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら、目的実現のために、組織運営を行うというスタイルを取っています。

「組織は誰のものか?」という問いに対する捉え方の変化が背景にあります

5章 1つ目の要点:進化する(組織の)目的

5-1 【ティール組織】での進化する(組織の)目的

上述しましたように、ティール組織では組織の目的を、進化する目的(エボリューショナリーパーパス)としています。

なぜ、進化する目的なのでしょうか?

それは組織自体を、株主や社長の所有物ではなく、1つの存在、生命体と捉えているからです。生き物に生きる目的があるのと同じように、組織が生きているため、目的を有しているという発想です。

また、生き続ける中で、目的も進化していくため、進化する目的と表現されています。そのため、定期的に、「この組織はどこに行きたがっているのだろうか?」と互いに感じながら、話し合う場等が設けられている組織もあります。

5-2 【ホラクラシー組織】での進化する(組織の)目的

ティール組織の一形態である、ホラクラシー組織において、組織の目的を考える際には、「この組織が存在として、生命体として、本当に最大限に可能性が発揮されている時に、どういうことで世界に貢献したいだろうか?」等を考えます。

組織の目的は存在として、生命体としての組織自体に宿っているため、目的自体も進化し続けるものと捉えています。

ホラクラシー組織では、組織内に社長等の役職者がいないため、組織が社長の所有物という意識は育まれること自体がなく、ただ生命体として組織が存在し続けています。

この特徴は、ティール組織の中でも、ホラクラシー組織において、より顕著であると思います。ホラクラシーを導入し、移行期での日々の取り組み(プラクティス)(別記事にて記載予定)を経る中で、一歩一歩、このような意識を育んでいくことが可能となります。

【実践メモ:進化する組織の目的を考える際の問いの例】
・この組織の可能性が最大限に発揮された時に、この組織が世界に貢献したいことは何ですか?
・世界がこの組織に実現して欲しいと渇望していることは何ですか?
・もし、世界からこの組織が失われてしまったら、世界は何を失ってしまったことになりますか?

(弊社:Natural Organizaitions Labでは、事業上の特徴から、世界を地球に置き換え、以下の4つ目の問いも大切にしています)
・地球が自らの歩みを振り返った時に、NOLは地球に何を残したと言ってもらえる存在なのだろうか?

 

6章 2つ目の要点:セルフマネジメント

6-1 【ティール組織】でのセルフマネジメント

ティール組織では、社長や管理職からの指示命令系統はなく組織の進化する目的を実現するために、メンバー全員が信頼に基づき、独自のルールや仕組みを工夫しながら、組織運営を行うというスタイルを取っています。

このスタイルを実現するために、以下の3点を工夫して、メンバー全員が真に主体的に関われる状態を実現しています

①情報の透明化(パフォーマンスや給料等含めたあらゆる情報)
②意思決定プロセスの権限委譲(個人の意思決定を尊重しながらも、組織的なフィードバックも届く)
③人事プロセスの明確化(採用・退職、給料決定のプロセスが独自に明確化されており、社長や役員等の個人的な権力が及びにくいようにされている)

メンバーやチームの成果プロセス行動もリアルタイムで見えるようになっており、メンバーやチームは、ダイエットに自発的に取り組むような形で、自分自身の成果やプロセス行動を自覚し、進化させる機会を組織内で有しています。

こういった組織状態のこと(個人ではなく)を書籍では「セルフマネジメント(が機能している構造や仕組みを有している組織)」と記載しています。主な特徴として、上記の3点(①情報の透明化、②意思決定プロセスの権限委譲、③人事プロセスの明確化)が体現されています。

6-2 【ホラクラシー組織】でのセルフマネジメント

ホラクラシー組織においては、セルフマネジメントを実現するために土台となる2つの工夫があります

工夫① 組織構造自体を目的実現のために進化させ続けられる工夫
工夫② 業務運営上のベクトルを合わせやすい工夫
※加えて、組織の潤滑油としてのテンションに寄り添うことを大切にしています
(テンションとは、理想状態と現実とのひずみであり、組織を良くするための機会として定義)(後述)

それでは、上記の工夫を軸に、ホラクラシー組織でのセルフマネジメントが可能となるプロセスを見ていきます。ホラクラシー組織でのセルフマネジメントの工夫はとても実務的で精緻にできているため、分量が多くなってきます。先に要点だけ掴みたい方向けに以下を記載しています

6-2-1 セルフマネジメントの要点

ホラクラシー組織では、組織の目的に沿って、組織構造自体を柔軟に変えることができる具体的な手順を有しています。これによって、組織内の全メンバーが、組織構造の最新状態を見ることが出来ますし、その意思決定に関わることが可能になっています。セルフマネジメントの阻害要因である、「役割の不明確さ」を解決することができます。

次に、構造に基づいて、日々の業務運営を行っていく上で、良いアイデアであったり、ちょっと懸念することであったり等が発生してくる際に、「テンション(=理想と現実のひずみ)」を誰もが伝えることができ、他のメンバーがそのテンションに寄り添うことを約束事にしています。

このテンションが肝要で、ホラクラシー組織が運営上も構造上も進化していくための潤滑油になっています。テンションの扱い方に慣れるための取り組みも準備されています。また、業務に関する重要な情報は見える化されているため、テンションを感じるために必要な社内情報へのアクセスも可能です

このように、組織の目的を実現するために、セルフマネジメントが発揮されるための、構造の進化運営面の工夫が施されているのがホラクラシー組織の特徴となります。それでは、以下、詳細を見ていきます

6-3 工夫① 組織構造自体を進化させ続けられること

それでは、1つ目の工夫である、「組織構造自体を目的実現のために進化させ続けられる工夫」について考えていきたいと思います。

最大の特徴は、「組織の進化する目的」を実現するために必要となる業務上の役割(以下、ローと呼びます)を作り、更新し続けられる独自のプロセスを有することで、現実の組織構造を常に最適にすることができるということがあります

全ての役割を作る際に、組織の進化する目的を実現する上で、役割がどのように貢献できるか、つまり、役割自体の目的も設定します。役割自体に目的があることで、組織構造を、組織の目的実現をもとに形作っていくことが可能になります

では、ホラクラシー組織においては、組織構造をどのように作り、進化させ続けることが可能なのでしょうか?それを考える前に、ホラクラシー組織での初期構造の説明をさせて頂きます

6-3-1 初期構造の設定

ホラクラシー組織における、初期の組織構造は以下となります

・上記の「ゼネラルサークル」とは対象となるホラクラシー組織全体を示しています
・上記の「リードリンク」、「ファシリテーター」、「セクレタリー」とは、初期に設定されているロール(役割)です。ロールとは組織の目的を実現するために必要となる、特定の仕事の集合を意味しています

・初期に設定されているロール以外に、目的実現のために必要なロールを、誰もが提案し、ホラクラシー組織独自のプロセス(後述)を経てロール化することができます。一度決まったロールの見直しもすることができます

【実践メモ:初期設定時のロールの概略】
全てのロールに「ロールの名前」、「ロールの目的(ロールが実現したい最高の状態)」、「ロールが継続的に取り組む業務(以下、アカウンタビリティ)」を設定します

初期設定ロール①:【リードリンク
組織の目的実現を果たしている
・目的実現のための戦略(方向性)及び重要指標を示している
・方向性により、優先順位を示している(示し方:AよりBを重視という形式)
・組織メンバーのアサインを行っている(能力や希望等を勘案しながら)
・投資資金の配賦を行っている 等

給与や賞与の決定等のアカウンタビリティはリードリンクにはなくロールを設定する必要があります。
例えば、給与賞与ロール等を設定することがあります。

(給与賞与ロールの目的、継続的に取り組む業務を設定した上で、)給与賞与ロールにおいて、例えば、どのような方法で給与賞与を決定するのか(市場相場で決める、業務にポイントを割り振るプログラムの開発等)を考えて実施することができる等を設定することが出来ます

給与賞与ロールが定めた給与賞与プログラムについて、感じたことや意見(テンションという。テンションについては後述)を出すことができ、常にプログラムが進化し続ける機会を組織として、伝える仕組みをホラクラシー組織では有しています

初期設定ロール②:【ファシリテーター】
・ミーティングのファシリテーションを行っている 等
初期設定ロール③:【セクレタリー】
・ミーティングの開催案内をしている
・ミーティングの記録を取っている 等

6-3-2 組織構造が進化し続けるための独自のプロセス

それでは、ホラクラシー組織においては、初期に設定されているロール以外に、どのようなプロセスで、目的実現のために必要なロールを提案し、更新し続けているのでしょうか

ホラクラシー組織では、「ガバナンスミーティング」というミーティングにおいて、それらを可能にしています。
ガバナンスミーティングの目的は、「ロールの新規追加、ロールの見直し、組織の進化する目的の更新等を行うこと」にあります。組織内の誰もが提案することができます

グラスフロッグというアプリケーションを使うことで、このミーティングプロセスを効果的に進めることが可能になります。ガバナンスミーティングは基本的には、毎月1回、実施し、ファシリテーターロールが進行します

6-3-3 ガバナンスミーティングの進め方の概略(詳細は別記事にて記載予定)

1)提案内容の募集
(誰もがロールについて提案可能)
2)提案内容の明確化
(内容自体を理解することを目的として、他のメンバーが提案者に質問)

3)提案内容へのリアクション
(他のメンバーから、提案自体への意見(賛成、反対等)を提案者に伝達。話し合いは行わない)
4)提案者による提案内容への加筆修正
(他のメンバーからの質問や意見等を受けて、必要に応じて実施。話し合いは行わない)

5)反対ラウンド
(提案内容によって、組織に損害が生まれ、組織が目的実現に対して後退するのであれば、独自の手順を経て反対意見として採用され、提案をブラシュアップする情報とします)
※反対意見として採用されない場合でも、提案者への新たな視点の提供になるため、反対意見はとても貴重です

6)統合ラウンド
(反対意見を勘案した提案内容に統合
7)決定(提案内容の採用)
※提案者は、プロセスの中で、いつでも提案内容を取り下げることも出来ます

6-3-4 提案内容の募集について

それでは、ガバナンスミーティング主な内容をお伝えします。まずは、提案内容の募集からです

提案は組織のメンバー、誰もが出来ます。提案する際には、まず、組織の目的実現と現状とのギャップを「テンション」という形で伝えることから始めます。テンションとは、組織が成長することに繋がる機会として捉えていて、そのため、問題という言葉を使っていない背景があります。

具体的には、誰もが、「こういうロールがあったらいいのでは?」や「このロールをこのように見直したらいいのでは?」等のテンションを挙げることで、提案することができます。テンションの背景には、提案者が持っているニーズがあります。

提案者のテンションに寄り添うことで、ニーズを実現することを大切にしています。そのため、ホラクラシー組織の1つの特徴として、テンションに寄り添うプロセスを有していることを挙げることが出来ます。

尚、提案した人が提案したロールを担当する必要はありません。ロールへのメンバーの割り当て(アサイン)は、リードリンクがロール自体の優先順位や、メンバーの能力及び希望等を勘案して実施します

6-3-5 提案者のテンションに寄り添い、提案を磨く

提案が出た後のプロセスで大切なことは、提案者のテンションに寄り添い、他のメンバーからの質問や意見を通じて、提案者自身が提案内容を磨くことが出来る時間を取るということです。

このような時間を取ることで、提案者の整理にもなりますし、他のメンバーも提案内容自体を理解し、提案者に新たな視点を提供することも可能になります

その上で、以下の反対ラウンドに移ります。反対意見とは、提案内容によって、組織に損害が生まれ、組織が目的実現に対して後退する内容を指しています。反対意見という表記ではありますが、意図としては、提案内容を異なる視点からブラシュアップするための情報と捉えています。以下に進め方の概略を記載しています。

6-3-6 反対ラウンド 「新たな視点の提供」

反対ラウンドでは、提案自体が組織に損害を及ぼすか、組織を後退させるか否かに焦点があたっています。そのため、損害もなく、後退させる理由もない提案は、基本的には可決され、進めていくことが可能となります。発想としては、アジャイル開発の発想に似ていると思います

(ホラクラシーの開発者であるブライアン・ロバートソン氏がアジャイル開発の専門家であったことも影響していると思料)

進め方としては、まずは反対意見がある方は、内容を伝えることができます。その後、反対意見が、反対意見として成立するかどうかを、ファシリテーターが、反対意見を伝えてくれた方に、独自に定められた手順(プロセス)に沿って質問をしていきます(詳細は別記事にて記載予定)。

6-3-7 統合ラウンド 「提案者のニーズに沿った新たな視点の勘案」

反対意見が採用された際には、反対の内容を勘案した統合案を、反対意見を出した人が作成します。

統合案が依然として提案者のテンション、ニーズに沿っていることを確認の上、統合案自体が提案内容となり、再度、反対ラウンドを行います。

(採用された=反対意見として成立した)反対意見がなければ、提案内容の採択となり、新たなロールの設定や見直し等が完了します。

新たなロールの設定がされた場合、グラスフロッグのシステムでは、以下のように、サークル内に新しいロールが作成されます。1つの提案で1つのロールが作成され、最終的に6つのロールが作成されたケースです。

このようにして、組織構造自体が進化し続けていきます

6-4 工夫② 業務運営上のベクトルを合わせやすいこと

前章までで、ホラクラシー組織における、「組織構造自体を目的実現のために進化させ続けられる工夫」について、お伝えしてきました。ここからは、「業務運営上のベクトルを合わせやすい工夫」についてお伝えしていきます。運営開始前に必要なことを整理した上で、運営開始後の流れを記載しています

6-4-1 運営開始前に必要なこと

組織の進化する目的の設定(5章にて記載)
ロールの設定(6-2にて記載)

重要指標の設定(リードリンクのアカウンタビリティ)
組織の進化する目的を実現するために、重要となる指標を、ロールごとに設定します。設定はリードリンクが行いますが、他のロールも、リードリンクが設定した指標について、テンションとして情報共有や依頼事項(リクエスト)を出すことが可能です。

また、リードリンクも指標を設定する際に、各ロールに重要な指標となることについて情報収集を行うことも可能です。

重要指標の例としては、売上等の数値や、顧客数、提案数、ウェブサイトのPV数等を挙げることができます。重要指標は週次、月次、四半期ごと等で設定します

設定したロールのプロジェクト設定
プロジェクトとは、ロールがロール自体の目的実現のために取り組む業務(アカウンタビリティ)を実行する中で生まれてくる、一定期間内で一定の成果を生み出す仕事のことを指しています。

1つのアクションで終わり、継続的ではないアクションをネクストアクションと呼び、プロジェクトとは区別されています。プロジェクトは、2つ以上のアクションが必要となる仕事となります

設定したロールのチェックリスト作成
チェックリストでは、ロールがロール自体の目的実現のために取り組む業務(アカウンタビリティ)を実行する中で生まれてくる、継続的なルーティン業務を対象としています。例えば、請求書発行やメーリングリストへの毎週の投稿等が該当しています

6-4-2 運営開始後の流れ

運営開始後は、毎週一回(基本)のタクティカルミーティング(後述)と日々の業務時に、ロールとテンションを意識して取り組むことが、とても重要になっています。
タクティカルミーティングでは、ロールごとのアクションやプロジェクトのベクトル合わせを目的にしています。

また、導入初期にはロールを意識したコミュニケーション(ロールコミュニケーション)に慣れることが大切であるため、タクティカルミーティングが有用な機会になります。日々の業務においても、社内のメールで例えば、どのロールから、どのロールへのメールであるのかも明確にしておくことが重要になります。

6-4-3 タクティカルミーティングの概略(詳細は別記事で記載します)

ガバナンスミーティング同様、ファシリテーターが進行します。主な内容は以下となります

チェックリストの共有(実施 or 未実施)
指標の最新情報の共有(最新指標の共有)
プロジェクトの進捗状況の共有(前回のタクティカルミーティングからの進捗の共有)
ロール同士のベクトル合わせの実施(プロジェクトやネクストアクション等)

6-4-4 ロール同士のベクトル合わせの実施

メンバーがテンション(目的実現と現状とのギャップ)を出すことから始めます。

テンションとしては、例えば、「営業」ロールから「マーケティング」ロールに、マーケティングパンフレットに載せる内容の打ち合わせをしたいや、「営業」ロールから「顧客管理」ロールに、顧客リストを見せてほしい等があります。これらは、ロールからロールへの、ネクストアクションのリクエストになります。

同様に、例えば、「営業」ロールから「マーケティング」ロールに、価格表の作成をしてほしい等のリクエストをテンションとして挙げることもできます。これは、ロールからロールへのプロジェクトのリクエストになります

また、ロールの新規設定やロール内容の見直しに関するテンションも挙げることができ、ガバナンステンションと呼んでいます。

ガバナンステンションは、次回のガバナンスミーティングで扱うことができます。急ぎの場合は、「セクレタリー」ロールにガバナンス会議の開催をリクエストすることができます。

後は、サークルメンバーに、その場で簡単に情報を共有することや、ヘルプを依頼すること不安や気がかりな事を共有することもできます

ファシリテーターは、テンションを出した方のテンションに寄り添い、ニーズを明確にすることが大切です。ファシリテーターは1つのテンションごとに、必要なものを聞いて、最後に必要なものが得られたかどうかを聞きます。必要なものが得られた場合、ファシリテーターは次のテンションを扱います

タクティカルミーティングで行う仕事内容のすり合わせ(ベクトル合わせ)は日常で実施できるので、タクティカルミーティングを待つ必要はなく、日常的に、ロールコミュニケーションとテンションに寄り添うことを実践し続けることが大切です

以上、ホラクラシー組織でのセルフマネジメントを可能とする工夫について見てきました。とても実務的で具体的な仕組みを有していることが分かって頂けたら幸いです。また、テンションに寄り添うという、とても人間的であったかいコミュニケーションが背景にあることも伝わっていれば嬉しいです

 

7章 3つ目の要点:ホールネス(個人としての全体性の発揮)

セルフマネジメントを組織的に、より有効に機能させるためにも、「メンバー全員の能力が存分に発揮されていることや、個人的な不安やメンバーとの関係性の上での気になること等に組織として寄り添うこと」がとても大切になってきます。このことを書籍では「ホールネス(個人としての全体性の発揮」と記載しています。

7-1 【ティール組織】でのホールネス

書籍で取り上げられているティール組織の中には、独自の取り組みや仕組みを工夫して、実践している組織もあります。例えば、相互の人間関係をよくするトレーニングや、意見や感情の相違を扱うトレーニングです。

また、個人が色々なタイプの仕事にチャレンジできるような工夫もされています。それによって、個人が多様な能力を発揮することが可能になります。

7-2 【ホラクラシー組織】でのホールネス

ホラクラシー組織においては、具体的にホールネスを実現するための工夫があります。特に以下の2つが大きいです。

7-2-1 多様な仕事の役割(ロール)を担当できる

最終的なアサイン自体はリードリンクが決めますが、メンバーもやりたいことをテンションとして伝えることができますし、リードリンクはそれ(=テンション)を尊重する必要があります

例えば、営業的なセンスに長けていて、そういったロールを担当している方が、企画的なセンスもトライしてみたいと思った際に、仕事時間の一定の時間を、企画的なロールに使えるようにする等、給与のプロセスと連動した形で、可能な限り柔軟に、その対応が可能となります。

7-2-2 不安や弱さも含めてテンションとして挙げることができる

6章で記載したように、テンションとして、不安や気になっていること等も挙げることが可能となります。また、ホラクラシー組織では、日々の取り組みの基本として、「メンバーのテンションに寄り添うこと」が設定されています。これらは、最初は新鮮ですが、習慣的に取り組むことで成熟していくことが可能です。

あるロールにアサインされているメンバーがテンションを、違うロールにアサインされているメンバーに伝えた時、伝えられたメンバーは、そのテンションに寄り添います。

具体的には、「テンションはどういったものかな?」や「何が必要かな?」等と聞きながら、相手のテンションの背景にある、相手のニーズを理解し、対応します。こういった会話が日常的にできるように次第になってくることが特徴的です。

8章 3つの要点(ブレークスルー)の背景

書籍では、上述した、「進化する目的」、「セルフマネジメント(が機能している構造や仕組みを有している組織)」、「ホールネス(個人としての全体性の発揮)」をティール組織の3つの要点(ブレークスルー)として記載しています。

3つのブレークスルーは、グリーン組織からの進化の過程で、「いかにして、権力分配するか?」という問いに応えていく中でも生まれてくるものと理解しています。

冒頭に記載した、「ティール組織とは、社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて、進むことが出来ている独自の工夫に溢れた組織」の中の「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても」という部分は、この「権力分配の結果」です。

分配の結果、マイクロマネジメントではなく、組織目的実現全員焦点てることが可能になります。

また、「組織の目的実現に向けて、進むことが出来ている独自の工夫に溢れた組織」というのは、組織の「進化する目的」の実現に向けて、権力を分配しながら、「セルフマネジメント」が機能するための独自の工夫のもと、メンバーの「ホールネス(個人としての全体性の発揮)」を大切にしている結果、生まれてくるものと考えています。

9章 まとめ

以上、ティール組織とホラクラシー組織との繫がりをお伝えしてきました。ティールとホラクラシーは違うものでも、似て非なるものでもなく、ティール組織の一形態がホラクラシー組織であることをお伝えできたかと思います。

より実務的な理解を深めたい方には、執筆者の方で出版させて頂いております、以下の本がご参考になるかと思います。『実務でつかむ!ティール組織  “成果も人も大切にする” 次世代型組織へのアプローチ

本記事が、皆さまのティール組織やホラクラシー組織についての実践的な理解に、少しでもお役に立てれば幸いです。

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吉原史郎初の著書が発売になりました!