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ティール組織の原点を理解!3つのブレークスルーの実践上の繋がりを解説!

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皆さんの中には、「『ティール組織』を手に取って読んだものの、ちょっと内容が掴みにくいなぁ」あるいは「どこから始めるのが良いのだろうか?」と感じていらっしゃる方もいることと思います。

2018年1月に『ティール組織(英治出版)』が発売されて以降、発行部数も7万部となり、多くの方が手に取る中で、私の方にも多くのご質問を頂いてきました。

「ティール組織は最も優れた組織モデルなのですか?」
「ティール組織で成果は上がりますか?」
「ティール組織は役職を廃し、給料を公開することなのですか?」

「ティール組織は、一部のセルフマネジメントができる方向けの組織ですか?」
「ティール組織になるには、何から始めればいいですか?」

そこで、今回は、「ティール組織の原点を理解!3つのブレークスルーの実践上の繋がりを解説!」と題して、ティール組織の原点を、原書に立ち返りながら、日々の実務経験も踏まえて、出来るだけ実務を意識して、お伝えします。ぜひ、この記事を読んで、ティール組織の理解を深めて頂けましたら幸いです。

ティール組織の背景にあるパラダイムや組織の歴史から読みたい方は1章から。背景にあるパラダイムを知ることが実践上でも、とても重要です。ティール組織の3つのブレークスルーから読みたい方は7章から。3つのブレークスルーの理解をベースにした取り組みの可能性について読みたい方は8章から読んで頂けると良いと思います。

尚、記載に際しては、フレデリック・ラルー氏が2014年に出版した『Reinventing Organizations(英語版)』及び『ティール組織(英治出版)』、フレデリック氏の最近のメッセージ動画が豊富にある「INSIGHTS FOR THE JOURNEY」、フレデリック氏ご本人や、ティール組織の事例として最も記載内容の多い、ビュートゾルフ(オランダ)のヨス氏やザッポス(アメリカ)のトニー氏達といった実践家へのヒアリングと、自社や伴奏支援先にてティール組織の原理を実践し続ける中で見えてきた知見をベースにしています。

目次)
1章 ティール組織とは?
2章 5つの組織モデル(組織の重心を知るための目安)
3章 その① 衝動型パラダイムとレッド組織
4章 その② 順応型パラダイムとアンバー組織
5章 その③ 達成型パラダイムとオレンジ組織
6章 その④ 多元型パラダイムとグリーン組織
7章 進化型パラダイムとティール組織
8章 何から始めるか?3つのブレークスルーの繋がり
9章 まとめ

1章 ティール組織とは?

原書の中には、5つのパラダイムに基づく5つの組織モデルが記載されています。ティール組織とは、その中の5番目の組織の名前です。尚、ティールは色を示していて、青緑色になります。5つの組織モデルについては次章以降からお伝えしていきます。

また、ティール組織を実務的に捉えると、「社長や上司がマイクロマネジメントをしなくても、組織の目的実現に向けて進むことが出来ている、独自の工夫に溢れた組織」という特徴が浮かび上がってきます。

フレデリック・ラルー氏は本の中で、ティール組織の事例から抽出したブレークスルーを3つ挙げています。まずは、この3つのブレークスルーがティール組織を理解する上で大切です。

・自主経営(が機能している構造や仕組みを有している組織)
・ホールネス(個人としての全体性の発揮)
・エボリューショナリーパーパス(進化する目的)

ティール組織については、詳しくは7章で後述しますが、実は、ティール組織が生まれた経緯と背景にあるパラダイムを知ることで、上記のエッセンスの理解を深めることができます。

2章 5つの組織モデル(組織の重心を知るための目安)

下記の五重の円は、フレデリック氏が記載している5つの組織モデルを示しています。5つの組織モデルの背景には、5つのパラダイムが存在しています。フレデリック氏は、それぞれの組織モデルに色とメタファーを付けて、著書で説明をしています。色は、レッド、アンバー、オレンジ、グリーン、ティールの5つになっています。

色分け自体は、ケン・ウィルバー氏のインテグラル理論に基づいており、人の意識の状態を色付けしています。(インテグラル理論については、ウィルバー氏の著書『万物の論理』及び「インテグラル・ジャパン」をご参考下さい)。フレデリック氏の本の一つの特徴は、人の意識の進化の概念を組織にあてはめたことにあります。

ポイントは、それぞれの組織モデルは、特定の文脈によく順応しているため、ある組織モデルがその前のモデルよりも「良い」「優れている」ということではなく、むしろ、世界に対処する上での「より複雑な」方法を有しているということです。

また、組織が全ての場面において、一つの組織モデルに属しているというわけではなく、組織の構造、慣行、プロセスの大半の部分が、重心として重きを置いているパラダイムがあるように感じるということが大切です。

このことは、特定の個人が一つのパラダイムのみに属していると言い切ることは難しく、言えるとすれば、ある特定の瞬間に、ある一つのパラダイムに「基づいて活動している」ということと近いと思います。

以下では、それぞれの組織モデルを、背景にあるパラダイムと共にお伝えします。

3章 その① 衝動型パラダイムとレッド組織

衝動型パラダイム

衝動型パラダイムは自己中心的な視点が強く、世界への認知として、世界は危険な場所で、力がなければ、自らの欲求を満たすことができない場所と感じています。

レッド組織

このようなパラダイムに基づく組織がレッド組織であり、レッド組織のメタファーはオオカミの群れです。組織運営の特徴としては、組織のトップがその地位を維持するために、圧倒的な力を示し、無理矢理にでも他の構成員を従わせるという、支配的な運営スタイルとなります。が重要であり、力に従属することで構成員は安心を得ることができます。

時間軸としては、今に力点があるため、短期的な思考の傾向があり、今日、どのようにして生き抜いていくかに焦点が当たっています。のある人の影響が大きく、恐怖と服従によって、組織を維持している状態です。

4章 その② 順応型パラダイムとアンバー組織

順応型パラダイム

順応型パラダイムは、自分の属している組織や社会を中心とする視点が強く、衝動型パラダイムでは難しかった、個人が自らを律し、自己抑制を働かせることができるようになってきます。背景には、正しさを決める不変の法則や規則、倫理観があり、その基準に沿って、正しさが判断されることがあります。

つまり、属する社会への帰属意識がとても重要となっています。帰属することで自らの安全を得ることができるため、衝動型パラダイムのように、力によって安全を手にする必要性が減少します。

また、衝動型パラダイムでは、力のある支配的な個人に権力がありましたが、順応型パラダイムでは、例えば、社会階級や明確な規則を作ることによって、階級が上位の役割に権力が存在しています。

アンバー組織

このようなパラダイムに基づく組織がアンバー組織であり、アンバー組織のメタファーは軍隊です。組織運営の特徴としては、上意下達で厳格な社会的階級に基づくヒエラルキーによって情報管理を行い、指示命令系統が明確な状態で運営するスタイルです。

特定の個人への依存を、階級的ヒエラルキーに基づく役割分担によって、レッド組織よりも減らしています。そのため、多人数を統率することが可能になります。組織の安定性を規則に基づいた統率によって可能にするモデルです。

規則に基づいた統率は、役職、階級、制服を日常的に使わせることで、メンバーが自分達の領域にとどまることを選択し、役割に一体化させる状態から生み出されます。メンバーは規則について、疑問を持つことなく、従うことが期待されています。そのため、秩序の維持や前例踏襲を、変化や競争よりも重視しています。

対象としている時間軸はレッド組織よりも長く、長期的な展望や計画を立てることが可能となります。過去の経験を応用できるようになったことが大きく、ピラミッドや大聖堂の建築等といった長期のプロジェクトにも取り組めるようになります。

5章 その③ 達成型パラダイムとオレンジ組織

達成型パラダイム

達成型パラダイムでは、順応型パラダイムのように、帰属する社会と不変の法則を中心に置くのではなく、世界を中心に物事を考える可能性が生まれてきます。世界の真実を追求しても、宗教上の教義や政治権力によって、命を落とす危険性が減少するため、より効果の高い、有効性の高いものを追求することが可能となります。これまでの方法を数値的に相対的に捉え、目に見える形で改善することができます。順応型パラダイムの絶対的な善悪を「成果があるかないか」という基準に置き換えているとも見えます。

すると、物質的な物や数値的に目に見えるものを大切にする傾向が生まれてくるため、人としての成功というものも、収入の額や獲得した地位等によって判断するという状態になっていきます。焦点は今後の人生で獲得したいことや成し遂げたいことにあたっており、未来を生きているような感じです。この状態では、目に見えないこと、例えば、自分の心の奥底にある、今ここにある声に重きが置かれることはありません。

オレンジ組織

このようなパラダイムに基づく組織が、オレンジ組織であり、メタファーは機械です。組織運営の特徴としては、アンバー組織のような厳格な社会的階級ではなく、社長や従業員等のヒエラルキーを持ちながら、成果を上げた従業員が評価を受け、出世することができる実力主義のスタイルです。

アンバー組織の時には、能力があっても、階級の壁を越えることはできませんでしたが、オレンジ組織によって、変化を歓迎し、競争が可能となり、イノベーションが生まれやすくなっていきます。工夫をし、頑張れば報われる度合いが高まっていきます。研究開発やマーケティング等、アンバー組織にはなかった部門も生まれました。

株主への説明責任が必須であるため、目標管理によるマネジメントが一般的になっており、目標を達成するための予算策定、実行する上での裁量権の分配もアンバー組織よりは柔軟に行われていきます。ただ、経営者にとって、裁量権の分配によって、管理できないことへの恐れが増大し、裁量権の分配が十分に行われることは難しいという状態も生まれてきます。裁量権の分配が遅れることで、現場の最前線でキャッチした情報やアイデアを活かすことが難しくなってきます。現場から提案を上げても、上には伝わらない構造が生まれてきます。すると、次第に変化の波に遅れ、変化が遅い組織となっていきます。

そのような葛藤も抱えながら、変化と競争の中で生き残ることが個人としても組織としても必須となるため、人間でありながら、組織の生産性を高めるためのパーツ、つまり、あたかも機械のように働くことが生じ、人間としての幸せとは何かという原点回帰が生まれる契機にもなります。特に、出世の階段から外れた方達にとって、そのような人間性への原点回帰は大切になってきます。

6章 その④ 多元型パラダイムとグリーン組織

多元型パラダイム

多元型パラダイムは、人々や社会に対する達成型パラダイムの影を十分に意識しています。そのため、仕事の成果よりも人間関係の方に価値を高く見ます。人間関係に価値を高くみると、権力の不平等は不要ですし、それを生み出す役職的な階層も不要となります。つまり、達成型パラダイムへの反動として、生まれてきた視点であるとも言えます。

グリーン組織

このようなパラダイムに基づく組織が、グリーン組織であり、メタファーは家族です。オレンジ組織同様、社長や従業員等のヒエラルキーを残すものの、オレンジ組織のように機械的な働き方ではなく、もっと人間らしく生まれ持った主体性が発揮され、個人個人の多様性が尊重されるような組織を目指す運営スタイルです。

言葉も変わっていきます。従業員ではなく、「メンバー」と呼ぶことや、「さん付け」をして呼ぶ等、一人の人として平等に接するという思いが強くなっています。

そのため、権限の委譲もオレンジ組織より進めており、意思決定の大半を現場の社員に任せています。変化への対応スピードもオレンジ組織よりは高めることができます。リーダーは部下に寄り添う、サーバント・リーダーになることが大切であり、上手くボトムアップできることが求められています。また、権限の委譲が進む中で組織をまとめる必要があるため、強力な文化や価値観が共有されていることが大切です。社内では、みんなで話し合っていく文化が醸成され、対話やワークショップが数多く開催されています。言いたいことが言えて、風通しが良いため、エンゲージメントも高まっていく傾向があります。

経営のスコープもオレンジ組織のように株主視点だけではなく、広く関係者全体、つまり、社会へと広がっていきます。関係するステークホルダーの中で、株主だけ特別扱いするのではなく、平等に扱うことを大切にしています。製品やサービスも本当に社会にとって大切なことを届けたいという思いが高い状態です。

グリーン組織の伸びしろとしては、お互いを思いやる気持ちは高く、合意形成(コンセンサス)を試みるものの、経営者の権力を組織内に実務的に分散するプロセスやルール等が未整備であるため、コンセンサスに時間が掛かり疲弊してしまうことが生まれます。また、リーダーのによって、権限移譲の度合いも変わってきています。

また、合意形成が取れない場合、最終的に社長の鶴の一声に委ねることが生じます。そのため、せっかくみんなで考えたことが、結果的に、「ちゃぶ台返し」となり、そのことにメンバーが失望することも起こります。リーダー自身もそのことに悩み、葛藤を抱えることになります。このような伸び代はあるものの、グリーン組織では、オレンジ組織よりは、メンバーの意見も言いやすく、風通しの良い、幸せな組織運営が可能となります。

7章 進化型パラダイムとティール組織

進化型パラダイム

前章まででお伝えした、衝動型、順応型、達成型、多元型パラダイムでは、自分たちの世界観に価値を置いているため、「AかBか」の意識状態にあるという特徴があります。例えば、達成型の視点では成果や論理が重要であり、多元型の視点では、成果や論理ではなく、人の幸せや感情が重要であるという世界観があります。

進化型パラダイムでは、こういった意識状態自体が進化するという認知を持ち、「AもBも」の意識状態が醸成されているという特徴があります。意識の焦点を当てる先が、論理か感情かではなく、論理も感情も、さらにはあらゆる領域を積極的に活用することを大切にしています。つまり、パラダイム自体に優劣を感じておらず、特定の状況下において、相応しい行動や言動を選択できる状態です。

恐れや野心、願望といったエゴについても一定の距離を置いて眺めることができ、意思決定の基準が外的要因(手に入れたい物、社会規範、成功、文化への調和等)というよりは、心の奥底にある声のような内的要因へとシフトしていく状態でもあります。

そのため、進化型パラダイムでは、自分が何者で、人生の目的は何か、という内省に駆り立てられるということが起きてきます。人生を、自分の本当の姿を明らかにしていく個人的、そして、集団的な旅路であるという見方も生まれてきます。「大志を抱いているが、野心的ではない人」。周りからはそのように見られるのだと思います。

自分の心の奥底にある声と繋がる際には、瞑想やヨガ、自然との共生等といった場面を意識的に多く持つことが大切であり、次第に、人生と自然との全体性が高まり、自分が自然と一体であるという覚醒にも繋がってきます。

ティール組織の背景には、このようなパラダイムが存在しています。フレデリック氏は、このようなパラダイムに繋がる実際の事例を調査し、それらの組織をティール組織とします。また、調査を通じて、対象組織の多くの方が、自分の組織を「生命体」や「生物」と捉えていることに気付きます。「生命体」や生命体の集合体である「自然」は、中央からの指令も統制もなく、「いのちの循環」という深い自然の知恵のもと、常に進化し続けています。

フレデリック氏が調査した組織では、組織ではあるものの、あたかも「生命体」のように、「いのちの循環」が生まれている組織であったと解釈することができます。このような背景があり、ティール組織のメタファーとして「生命体」が選ばれています。

それでは、「生命体」としてのティール組織にはどのような特徴があるのでしょうか?以下では、フレデリック氏が調査対象の組織から抽出した3つのブレークスルーをお伝えしていきます。

・自主経営
・ホールネス
・エボリューショナリーパーパス(進化する目的)

7-1 1つ目のブレークスルー:自主経営

フレデリック氏とお会いする中で、どうして自主経営を1つ目のブレークスルーとして記載したのかをお聞きしました。彼は、ティール組織を説明する際に、自主経営というブレークスルーが最も特徴的で分かりやすかったと教えてくれました。

フレデリック氏の本を見てみると、自主経営とは、「役職的な階層構造や合意形成に頼ることなく、権限が分散されていて、(チームや同僚の関係性をベースにした集合知が力強くそして豊かに発揮されているシステム」であるということです。

実はこういったことは生命の集合である自然界では循環の仕組みの中で行われています。例えば、森の中では、誰かが冬が来ることを予測し、対策を指示するということはなく、それぞれが相互作用の中で感じ合い、自ら、冬に備えていきます。冬がくる時期は早くもなり、遅くもなるため、そもそも、予測しようがないのです。

自主経営の特徴として、組織構造面と組織のプロセス面において、以下の点を挙げることができます。

【組織構造面】

上司やミドルマネジメントが不在(必要最低限の本社スタッフ機能)
組織構造面では、上司やミドルマネジメントが不在自主経営チームという特徴があります。例えば、ビュートゾルフというオランダの地域看護を行う組織では、管理職がおらず、10~12名(最大12名という基本ルールが有る)のチームメンバー全員が看護師で、チームごとに発生する全ての業務に取り組んでいます。1人のリーダーが指揮するのではなく、役割を分担することでチーム運営を行っています。

ビュートゾルフでは、上記の自主経営を効果的に実践するための支援(チーム運営での基本ルールの理解、ルールの実践の場、ツールの習得等)を行うことで、自主経営チームを実現させています。具体的には、ミーティングの進め方や人との関わり方に至るまで、独自の方法を進化させ続けています。もちろん、こういった方法を駆使しても解決できない場合には、外部の助けや、社内の「地域コーチ(チームの収益責任や意思決定権は持たない)」にサポートを求めることができます。

情報の透明化
また、ビュートゾルフでは、チームごとの情報の透明化が実現されており、チーム内はもちろん、チーム間でも、収益情報や稼働情報など、あらゆる情報が透明化されています。各チームは、情報を見ながら、自然とベクトルを合わせ、業務を行うことが可能となります。

情報の非対称性が解消されており、社内に秘密がない状況を作ることが大切です。誰かが知っていて、誰かが知らないという状況は、情報格差を生み、社内に情報格差を解消するための非公式な階層を生み出し、自主経営の阻害要因となるからです。

ビュートゾルフのチームでの基本ルールの中には、チームの収益が赤字になった際の扱い方や、訪問介護を行う時間の総労働時間に占める割合等も目標ではなく目安として定められています。チームが自主的に経営できるための目安として指標を活用していることが重要です。

役割間の移動の柔軟性と役割の進化
同じく、組織構造面での特徴として、自主経営チーム内において、メンバーが仕事の負荷と自分の好みに従って役割を頻繁に取り換え、新しい役割も作ることができるという特徴もあります。

役職がない場合も多く、チームの目的実現のために必要な役割が自然と生まれ、担当したい方が担当し、役割が果たされたら役割が無くなるという自然の循環に近いことが行われています。さらに、役職が無いだけではなく、呼称も従業員、労働者、マネージャーという用語が廃止され、単に「同僚」といった言葉で置き換えている組織もあります。

【組織プロセス面】

助言プロセス(アドバイスプロセス)
組織のプロセス面での特徴として、業務の意思決定時に助言プロセスを採用していることが挙げられます。助言プロセスは、AESというアメリカのエネルギー会社で実践されている方法で、フレデリック氏の本で取り上げられた他の事例でも、AESにて、助言プロセスと呼ばれている方法に近い方法が実践されています。組織によっては、給与の決定も含めて助言プロセスを活用して、同僚間の話し合いに基づき、最終的には自らが給与を定めるということも実施されています。

助言プロセスの原則として、組織内の誰もがどのような意思決定でも行うことができることがあります。ただし、意思決定の前に、関係する全ての関係者とその問題の専門家に助言を求めなければいけないことがあります。さらに、意思決定に際して、全ての助言を組み込む必要はないのですが、その助言内容を真剣に検討しないといけないという考え方があります。

とても刺激的な事例ですが、AESでは、この助言プロセスによって、入社間もない財務アナリストが、未知の国である、パキスタンへの事業拡大の意思決定を行ったということがあります。CEOや多くの関係者の助言としては、AESにとって未知のエリアであることから難しいという助言や、入社間もないメンバーであったため、事業拡大の前にまずは目の前の現場を知って欲しいという助言はありましたが、最終的に、そのメンバーはパキスタンへの事業拡大を決定しました。結果的に、二年半後、パキスタンでのビジネスが軌道に乗り、AESにとってのビジネス拡大の一助となったというエピソードがあります。

上記の助言プロセスのエピソードの背景には、AESのメンバーへの人間観があります。例えば、メンバーを、創造的で思慮深く、信頼に足る大人で、重要な意思決定を下す能力を持っているという人間観があります。このような人間観があって初めて生まれてくるのが助言プロセスだと感じます。つまり、助言プロセスには人への信頼があり、組織内での信頼の文化は、信頼することから生まれてくることを教えてくれています。自主経営の構造と助言プロセスによって、同僚間の信頼という土壌がゆっくりと育まれていきます。

以上、自主経営のポイントをお伝えしました。組織の役職的な階層を無くすと共に、情報の透明化を実現する。その上で、役割の柔軟な交換や役割自体の更新を行う。そして、意思決定における助言プロセスによって、組織内の信頼を土台に、同僚間やチーム間での集合知が活かされるシステムを生み出していることが分かります。

7-2 自主経営についての誤解

自主経営についての誤解として、組織構造やルールがない、全員が平等、権限委譲がされている等があります。

組織構造やルールがない

まず、組織構造やルールがないという点では、上記のビュートゾルフの事例でも見たように、自主経営組織には、組織構造があり、ルールも存在しています。組織構造上の特徴としては、ビュートゾルフの場合は、並列に並んだチームと最小限のスタッフ機能の組織構造を取っています。

他の事例では、アメリカのトマト専門の生産・運送企業のモーニング・スターでは、多くの作業工程がありますが、作業工程が密接に繋がる同僚同士の話し合いが何度も設けられ、それらの作業が個別契約で明確化及び透明化された状態で、ウェブ構造で繋がり合っている組織構造を作っています。その他、アメリカのホラクラシー・ワンが開発したホラクラシーという方法では、サークルと呼ばれる役割の集合体何階層にも目的に応じて存在している構造(目的階層構造)を取っています。ホラクラシーについての詳細はこちらの記事をご覧ください。

権限委譲が重要

そもそも、権限が委譲されているということは、組織のトップに権限が集中していて、それを心ある経営者が権限を譲り渡しているという状況があります。自主経営では、組織内の権限は既に、システムの中で分散されているため、特定の権力者がいるという状況を生み出していません。そのため、権限委譲がされているということではなく、権限は既に分散されていて、メンバーは自主経営組織に入ると同時に、自分の役割を果たす上での権限を有しているということです。

全員が平等で階層は無い

自主経営では、全員を平等に扱うことで不平等を克服するのではなく、不平等を超越できるシステムをつくっています。上記の権限委譲でも記載したように、自主経営組織では、そもそも、メンバー全員が自分の役割を果たす上での権限を有していて、助言プロセスによって、自分の仕事に関する限り、必要なことを何でもすることができます。つまり、必要な権限を全て持っているということです。

この点において、不平等を超えることを実現しています。大切なことは全員を平等にすることではなく、メンバー全員がそれぞれの役割において、エネルギーに満ち溢れ、自己実現することを認めるということです。

そのため、自主経営組織においては、スキルや能力、専門知識や評判等によって、自然発生的多数の階層が生まれてきます。権力を独占する役職的な階層や、情報の格差による階層を無くすことで、人の特徴や持ち味が発揮され、自然発生的な階層が生まれて、組織が続く限り、まさに「生命体」や「自然」のように変わり続けます。

7-3 2つ目のブレークスルー:ホールネス

2つの目のブレークスルーとして挙げられているホールネスについても、フレデリック氏の本を見てみると、「組織というのはこれまで職業人的な自分論理的で明快な姿等)だけを見せる場所であったが、ティール組織ではメンバーが、職業人としての自分だけではなく、自分自身の心の奥底にある声に耳を澄まし、自分自身の全て感情的な部分等)を持ち込むことができるように、一連の取り組みを発展させている」というポイントが浮かび上がってきます。感情を自分や相手を知るための大切なヒントであると捉えています。

自分自身の全てには、感情的なもの、特に不安や弱さをさらけ出すということが含まれています。さらに、未開発の能力的なものも含まれており、個人の能力が最大限に発揮されていることも、ホールネスという言葉には含まれています。つまり、ホールネスとは、個人としての感情面能力面での全体性が発揮されている状態となります。

このような自分自身の全体性世界との繫がりを通じて取り戻していくプロセスがホールネスであり、全体性を求める気持ちが、ホールネスというブレークスルーの扉となります。ホールネスと自主経営との繫がりですが、自主経営組織では、そもそも、自分の全体性を阻害するような要素(役職的な階層による心理面の抑圧や情報の非対称性等)が少なくなっているため、自分の考えや想いが循環しやすく、ホールネスが実現されやすい環境にはあります。つまり、自分が自分らしくあるということを実感しやすいということです。

例えば、職場にを連れてくるということも自然におきます。犬がいることで、声を掛け、人同士が会話することも生まれ、自然とホールネスが高まります。職場に自然が感じられる場所があることや、そもそも自然の近くに職場があることで、自然の中を歩くこともでき、心をリラックスさせることも可能となります。自然の中で歩くことを習慣的に行うことでも、自分の心の声に耳を傾けることができます。

入社時の研修においても、ホールネスを意識した取り組みが行われていて、メンバーが職場で「自分らしさ」をもっと出せるように、組織内での基本ルール価値観についての研修を受けます。例えば、自分のニーズに意識を向ける非暴力コミュニケーション(NVC)のトレーニングや、お互いの意見の食い違いや紛争が起きた際に、どのように解決するかのトレーニングが行われています。入社以降の研修においても、昇格や昇進をするための研修ではなくて、共通の文化を確立するための基本ルールや価値観についての研修や、自己啓発のための研修が行われています。

このように、自分自身の全体性を取り戻すというホールネスから、様々な取り組みが行われています。

7-4 3つ目のブレークスルー:(組織の)進化する目的

フレデリック氏の本を見てみると、組織の進化する目的について以下のような記述があります。

「ティール組織はあたかも生命体のようであり、それ自身でどこに進んでいきたいかの方向感を持っているように感じる。ティール組織では、未来を予測し、コントロールするのではなく、組織のメンバーが、この組織がどうなりたいのか、この組織が自然に行きたい場所はどこなのかについて、耳を傾け、理解する場を大切にしている」

目的は変わっていくもの

組織の進化する目的(エボリューショナリーパーパース)という言葉、「目的が進化する」という世界観によって、生まれてくる特徴的なことをお伝えします。目的が進化していくため、固定的な理念の存在はなくなり、変わり続けるものという認識が生まれています。個人の目的(大切にしていること)が人生の経験と共に変わっていくのと同じように、組織の目的も移ろい、変わっていくという世界観です。

意思決定の拠り所

また、組織の進化する目的は、壁に飾られているものではなく、メンバーにとっての意思決定の拠り所となり、本当に重要なものとなっていきます。レッド組織、アンバー組織、オレンジ組織では、数多く存在する競争相手から奪われる利益を最小化したいという恐れが色濃くあるため、組織の目的を考える時間はありませんし、戦いの最中ですから、必要性も感じにくいものとなっています。

感じること(センシング)が大切

組織の進化する目的が大切にされ、メンバーが耳を傾けることで、組織がどこに向かいたいのか感じること(センシング)や、そのことをお互いに話し合うことが可能となります。固定的に定めた未来ではなく、その都度、目的に耳を傾けることで、進化する目的に繋がる今が作られていきます。自社の進化する目的が広く世の中に知れ渡り、進化する目的が実現されるという意味で成長を志向することはあっても、成長自体が目的にはなっていません。

参考:進化する目的を考えてみる

組織の進化する目的を考える際の参考として、ホラクラシー・ワンが開発したホラクラシーでは、以下のような問いを活用しています。

・この組織の可能性が最大限に発揮された時に、この組織が世界に貢献したいことは何ですか?
・世界がこの組織に実現して欲しいと渇望していることは何ですか?
・もし、世界からこの組織が失われてしまったら、世界は何を失ってしまったことになりますか?

固定的な戦略から自然と湧きあがる状態へ

組織の進化する目的に焦点が当たり、自主経営が実現されている組織には、特定の権力を持つ人が立てた固定的な戦略、中長期事業計画、予算、目標、可能性が閉じられてしまう詳細な計画というのは存在しておらず、誰もが、進化する目的を通じて、組織が進みたい方向性について、おおざっぱな感覚を持っています。

すると、組織のあらゆる場所で戦略が自然と湧きあがり、助言プロセスを通じて、次の一歩に繋がっていきます。実行段階では、ベストな行動を待つのではなく、すぐに機能する実行可能な解決策を試し、新しい情報が入り次第、以前の意思決定が見直され、改善が図られていきます。目標については、自らやチームにとって機能する、つまり、意味があるという際に、目安として設定しています。

予算に関する事例としては、アメリカの上場会社であるサン・ハイドロ―リックスでは、年次予測をやめて、次の四半期の予測値のみを公表することに変更しています。背景には、予測不可能なことを予測することはしないという考え方があります。

個人の目的と組織の目的

ティール組織では、個人の目的が組織の目的と共鳴している状態を大切にしています。そのため、採用時点から、能力や自主経営組織への適合性に加えて、目的の共鳴度合いというものを重要視しています。目的の共鳴度合いを知るには、候補者自身の目的を知ることが不可欠ですので、会社のことを知ってもらうことだけではなく、しっかりと相手を知るということを採用時から大切にしています。入社後も、日頃の仕事での経験を振り返ることを通じて、個人の目的を考える習慣をうまく組み込んでいる組織もありますし、研修として、内省の機会を設けている組織もあります。

8章 何から始めるか?3つのブレークスルーの繋がり

最後に、自組織において、何から始めることが大切なのかをお伝えしていきます。まず、立場によって異なってくることがあります。経営者であれば、取締役会の理解と支持が必要ですし、現場のメンバーであれば、経営者の理解と支持も不可欠になってきます。もちろん、現場のメンバーが、自分が安全にトライできるエリアがあれば、限定的にチームの中で、試してみることは可能です。

それでは、経営者や取締役会の理解と支持があった場合、何から始めていくのが良いのでしょうか?

8-1.一つのブレークスルーから試しみる

当社の伴奏先もそうですが、各社各様であると考えています。組織の文脈に応じて、自主経営、ホールネス、進化する目的の中で、どこに組織のニーズがあるのかによって、始めるポイントが変わってきます。一度に全てのブレークスルーについて同時並行で進めるのではなく、まずは一つのブレークスルーから一歩を試してみること、そして、起きたことを観察して、進化する目的に耳を傾けて、見直してみることも大切です。

例えば、組織のニーズが、進化する目的にある場合、進化する目的への共鳴を高める取り組みを行うことで、ホールネスも高まり、自主経営を行う情熱が自然と上がっていくかもしれません。ニーズが、経営者への信頼性の回復にある場合、経営者はまずは、今の信頼性の低さの背景を感じ、メンバーの話を聴くことが不可欠かもしれません。つまり、経営者のホールネスの回復が求められているという状況です。このように、組織の文脈から生まれてくるニーズを感じることが大切です。

繰り返しになりますが、一歩ずつ試していくことが重要ですので、一気にティール組織になるということではなく、少しずつ、組織内での取り組みを進めていくことで、次第に、進化型パラダイムに重心のある取り組みが増えてくるということです。また、組織である以上、該当する法律等に対応しながら、経営をしていきますので、法律の背景にある世界観は理解し、守っていく部分も存在しています。全てをティールパラダイムのみで経営するということではないということです。

このように、組織の文脈上のニーズを大事にするという前提のもと、選択肢のご参考として、取り組みの方向性を整理しています。

8-2.「自主経営」が入り口の場合

例えば、自主経営を入口として選択し、さらに、役職階層を無くし、役割に置き換えることを実施する場合、組織内でのチャレンジが相当程度求められ、難易度が高くなります。特に、組織の管理職やミドルマネージャークラスの方への理解、現場での混乱が容易に想定できます。

自主経営の中でも、情報の透明化、つまり情報の非対称性を解消することだといかがでしょうか?

情報の種類によっても難易度は変わりますが、日本企業でアデコジャパンの場合ですと、経営会議での発言が一言一句そのままの形で議事録として残り、全社員(3,000名)に公開することを継続しています。実際、現場の声として、情報が閉じられている時よりも、経営層の考えていることが分かりやすくなったという声もお聞きしています。詳細は拙著に記載していますので、ご関心のある方はぜひ、ご覧ください。

もちろん、難易度の高いことから取り組むことが悪いわけではありませんので、個人的にはお勧めできませんが、丁寧に吟味した上で、試しに始めることも一案としてはあります。

8-3.「ホールネス」が入り口の場合

上記は自主経営に視点を当てていますが、ホールネスの場合だといかがでしょうか?

最初は不愉快に思う方もいらっしゃいますが、自主経営の役職の廃止よりはインパクトが少ないため、導入としては始めやすくなってきます。仕事の仮面を脱ぎ、ありのままの自分で話し始める人が増えてくると、次第に、心が通い始め、信頼関係の醸成に繋がってきます。

心が循環していくような感じです。日々、少しでも前に進んだことや出来たこと等も、出来なかったことや原因分析だけではなく、語られるようになってくると、個人が自分の中にある全体性に気付きやすくなってきます。さらに、仕事以外の家族や趣味のことも話すようになることで、さらに全体性が高まってきます。

8-4.「組織の進化する目的」の視点

組織の進化する目的だといかがでしょうか?

まず、目的への共鳴という観点でいうと、実は、ホールネスの取り組みが土壌となり、例えば、仕事での経験から大切にしたいこと(目的)をお互いに分かち合うことが可能となってきます。目的という言葉がかたければ、シンプルに、大切にしたいことでも大丈夫です。お互いに、大切にしたいことが自然と話せる場があり、循環するようになってくると、個人も自然と大切にしたいこと(目的)を自覚するようになってきます。

個人の目的への自覚が高まってくると、自然と、組織の目的への反応が生まれてきます。共鳴かもしれませんし、違和感かもしれません。違和感も含めて、ホールネスの土壌のもと、話を聴く場は大切です。

組織の目的への共鳴が生まれてくると、目的に耳を傾けることも自然と生まれてきます。耳を傾けようと言う必要も減ってきます。

このように、ホールネスの土壌を育むことで、目的への共鳴も生まれてきます。すると、いきなり、中期経営計画や予算を無くしてしまうことよりは、ホールネスの方が始めやすいのではないでしょうか? 組織の目的との共鳴が生まれてから、目的に耳を傾けた取り組みを進めていくという可能性も開けてきます。

また、メンバー間の信頼関係が醸成され、組織の進化する目的への共鳴が高まってきたら、その状態で、自主経営の難易度の高い取り組み(役職から役割への移行)を段階的に試しながら(役職と役割の共存等)進めていくことも選択肢としてはあります。

アメリカのザッポス(Eコマース)では、2014年にホラクラシーを導入し、当初、ザッポスを退職された方もいらっしゃいましたが、昨年訪問した際に、ホラクラシーが機能し、新しい事業や取り組みが生まれやすくなったことを現地で確認してきました。ザッポスの場合には、そもそも、ホラクラシーの導入前に、ホールネスや情報の透明化という土壌があったことが、ポジティブな要因だったと感じています。それでも退職者は出ているため、もし、ホールネスの土壌や情報の透明化といった土台がなければ、さらに混乱を極め、現在の姿は無かったかもしれません。お伝えしたいことは、一つずつ進めていくことの大切さです。

本章では、「何から始めるのか?」について、実務的な選択肢の可能性をお伝えしました。皆さんの現場でのベイビーステップの参考になれば嬉しいです。

9章 まとめ

以上、本記事では、日頃頂く質問をもとに、ティール組織の原点を、改めて、パラダイムから振り返り、その上で、ティール組織に関する実務的な理解を深めていただき、ベイビーステップに繋げていただくことを大切にしてきました。自分にとっては、内省の友であり、先人のヒントの宝庫でもある、ティール組織を、一人でも多くの方にとって、身近な存在にしてもらえれば嬉しいです。

コメント

  1. 譜久山 仁 より:

    600ページのティール組織 と イラスト解説ティール組織 の両方がダイジェストでわかります。
    ティース組織ってね、 と説明するのにとても便利な記事です。

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