(2021年11月20日更新)
「Natural Organizations Lab 株式会社」共同創業者の吉原史郎は日本初の「*ホラクラシーライセンス プロバイダー」です。 *「ホラクラシー」を開発したHolacracy One社のアセスメントで認定コーチになり、ライセンス契約を結んだ人が、ライセンスプロバイダーとして、「ホラクラシー」に関するサービスを提供することが”法的”に可能となります。
皆さんの中には、「ホラクラシー組織とは何だろうか?」「どんなメリットやデメリットがあるのだろうか?」「事例は?」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は、ホラクラシーは、新しい概念であり、また、進化し続けているため、実際に最新のホラクラシーに触れたことのある方は少ないのが現状です。ホラクラシーとは、アメリカのホラクラシー・ワン社が開発した「Holacracy(ホラクラシー)」のことを示しています。
そこで、本記事では、日本初*のホラクラシー・ワン認定コーチであり、日本初&&日本唯一のホラクラシーライセンス プロバイダーである吉原史郎が、最新の情報も含めて、「ホラクラシー」について、初めての方にもイメージして頂きやすいように記載しています。
*参照:吉原史郎『実務でつかむ!ティール組織』(大和出版 2018)https://amzn.to/34U1SRP
「そもそも、ホラクラシーとは」から始まり、「メリット、デメリット」、「よくある誤解と真実」、「実践事例」まで記載していますので、読んで理解を深めて頂けたらと思います。
目次)
1章 Holacracy(ホラクラシー)とは
Holacracy(ホラクラシー)とは、Holacracy One(ホラクラシー・ワン)社のBrian Robertson(ブライアン・ロバートソン)、Tom Thomison(トム・トミソン)が2007年に開発した役職階層型組織に変わる新しい組織デザインの方法です。
(Holacracy One(ホラクラシー・ワン)社のBrian Robertson)
権限を経営層や管理職に集中させるのではなく、広く組織全体に分配し、組織のパーパスと全ての業務が繋がった状態のまま、メンバーが自主的に活動できるという特徴があります。
尚、ホラクラシーとはホラーキーという言葉に由来しています。ホラーキーとは「ホロン同士の繋がり」。ホロンとは「それ自体が全体であり、同時に部分でもあるもの」。例えば、人体、器官、細胞もホロンになります。
1-1.どうして今、注目されているのか?
私たちが直面しているVUCAワールドの中では、まさに今、「Withコロナの時代」となり、環境が変化し続けています。テレワークも急速に当たり前となり、雇用のあり方もメンバーシップ型からジョブ型への移行の流れが生まれています。このような状況下では、組織が変化に飲み込まれるのではなく、変化を取り込むことが不可欠です。
組織の目的に立ち返り、必要とされる独自の価値を生み出し続けていくことが必要です。そのためには、変化を取り込める「循環の良い」仕組み、慣習、文化が重要です。
しかし、現在、主流である「役職階層型組織」では、規模の大小を問わず、健全に外部環境の変化を感じられないことや、変化を感じても行動に移せない状況が常態化しています。
例えば、山では、冬が来ることを察知して、動物が冬眠を始めます。冬が来ているにも関わらず、他者からの指示がないので冬眠をせず、全滅してしまうというようなことは起こりえません。
しかし、健全に変化を感じられない「循環の悪い」組織では、そういったことが起きてしまうのです。結果、「循環の悪い」組織は変化を取り込み、新たな価値を生み出しづらくなり、衰退していきます。
以上のような背景から、外部環境の変化を活かす、「循環を良くする」手段として、ホラクラシーが注目されています。
事例企業にあるように、コロナショックにおいても、ホラクラシーが機能して、トップダウンではなく、自律的に変化し続けることが可能です。
ホラクラシーでは、外部環境の変化を「権限と責任を有するロール」が担当範囲に応じて、変化を感知して行動します。
ロールとは仕事上の役割のことで、例えば、マーケティングやホームページ、SNS等、様々な粒度で組織に合った形で作ることができます。
ロール担当者は仕事についての権限があるため、経営者や管理者の承認やコンセンサスを得る義務はなくなります。関係する他のロールに相談やヘルプがあった際には、相談やヘルプをしてくれるロールに助言を求めることが可能です。
重要なのは、上司や部下という関係性でのやり取りではなく、ロール同士でやり取りをすることです。
しっかりとした学習プロセスを経ると、大体、数カ月から半年8程度で慣れてきます。慣れてくると、これまでの役職階層型組織のような制約の多い環境下では活動しにくかったメンバーもロール担当として、健全に活動することができます。
後述するBowLさんの事例からもイメージを掴んで頂けると思います。
コラム:組織の目的とロールの目的
ホラクラシーでは、組織の目的を「最大限の可能性に溢れた実現したい状態」として、パーパスと呼んでいます。進化することが前提のため、*進化する目的(エボリューショナリーパーパス)とも捉えられます。従来の組織で言うと、経営理念や社是等の存在目的を示したものが「進化していく」ようなイメージです。
*『ティール組織(英治出版)』の「エボリューショナリーパーパス(進化する目的)(存在目的)」は、著者のフレデリック・ラルーさんがホラクラシーのワークショップに参加した際に着想を得たと聞いています。ティール組織についてはこちらの記事をご参照ください。
組織の目的を実現するために、ロールにも細分化された目的を設定します。ロールの目的が組織の目的と繋がっているため、ロール活動に集中することで、結果的に組織の目的実現に繋がる構造です。大前提として、メンバー個人が、ロールの目的と組織の目的の両方に共鳴を感じていることが不可欠です。
コラム:組織の特徴(簡易版)
「役職階層型組織」、「ボトムアップ型組織」、「Holacracy組織」の特徴は以下になります。
1-2.メリットとデメリットは?
メリット)
1)意思決定や改善サイクルが早くなる(オンラインで可能)
ロールが意思決定し、業務を遂行します。そのため、ロール担当者が役職階層型組織のように、上席者の承認をもらわないと決定できないということはなくなります。もちろん、関係するロールにアドバイスを求めたり、関係するロールが助言をすることはできます。
こういったプロセスを助言プロセスと呼んでいます。尚、ホラクラシーでは、全て、オンラインツール(GlassFrogやSlack)を使って運用が可能なため、テレワークにも適しています。また、ジョブ型での仕事の進め方がホラクラシーの基礎になっているため、最近のメンバーシップ型からジョブ型への流れとも親和性があります。
→役職階層型組織からいきなりホラクラシーを「導入」してしまうと、組織面での混乱が高く、事業面に悪影響が及び、経営状況が悪化する懸念が高まります。
そのため、準備段階で「そもそも役職とは何なのか?なぜ、必要なのか?」といった問いから対話を進め、「何が組織としての困り事、ニーズなのか」を話し合うことをお勧めしています。
2)社内政治がなくなる(不要になる)
誰がどのロールを担当しているかが一目瞭然のため、相談先がわかります。情報を誰もが閲覧できるようになり、人による情報の偏りがなくなるため、社内政治がなくなります。
影響力のある方、例えば経営者が率先して、言動や行動でホラクラシーの体現者になることが大切です。
安易にホラクラシーを「導入」するのではなく、しっかりと経営者が個人的にも経験を積み、自身の心の声にフィットしているのか、確認した上で、手段として「活用」するというスタンスが重要です。
3)自分の小さな声を受け取ってもらえる
「アイデアや気になること、不安等」、自分の中の小さな声(「テンション」という)を伝えられる共通の約束事(フレームワーク)があります。
「テンション」とは、ロールが感じる「理想と現実の間のひずみ」のことです。他のメンバーはお互いにテンションを聞く必要があります。
組織の中でのフィードバックループ、つまり、循環が良くなっていきます。個人的に感じるテンションがあれば、もちろん出すことができます。
例えば、個人のテンションを扱う場として、カフェ的な場を作ることをお勧めしています。
事例で後述するBowLさんでは、経営者含めて影響力のある方のあり方が素晴らしく、メンバーが臆することなく、どんどんテンションが出せています。
ホラクラシーは一見すると、仕組みの変更と誤解されやすいのですが、実は、経営者や影響力の高いメンバーの内面や人間関係への深い理解があって初めて実現可能となります。
最近のホラクラシーでは、海外においても、これまでのように「機械的で効率性を重視した運営」ではなく、「人間的な側面も合わせて運営」することが重要になっています。
デメリット)
1)ある程度の準備期間が必要
ホラクラシー自体、新しいスポーツのようなもののため、経営者含めてメンバーがある程度慣れるために、半年から一年程度の期間が必要となります。
組織が持っている独自の文化の上に、ホラクラシーを手段として「加える」「活用する」という考え方が健全です。
「ホラクラシーを導入すれば組織がうまくいく」という考え方は安直です。
2)ある程度の事業安定性が必要
本丸事業のキャッシュフローに不安がある、もしくは、本丸の事業の急成長が求められる状況下では、事業面の優先順位が高く、組織面でのOSが変わる、ホラクラシーへの準備に時間を使うことは得策ではありません。一定の学習時間が組織に必要となるからです。
そういった場合、まずは事業に集中しながら、経営者や経営陣が無理のない範囲で、ホラクラシーを個人的に学ぶことをお勧めしています。
3)日本的な感覚、自組織用にカスタマイズするセンスが必要
型どおりホラクラシーを行うと、西洋文化に根付いて作られているため、しっくりこないなと感じられることも生まれてきます。
例えば、ロールを定義するために文章の作成が必要だったり、ミーティングを型通りに実施することで、居心地が悪く感じたりといったこと等が発生する場合があります。
最初は習いながら、次第に原理が分かってくるため、経験豊富なコーチに要所要所で付いてもらいながら、柔軟に運営していく姿勢も大切です。
2章 ホラクラシーを深く理解しよう
2-1.8つの誤解と真実
ホラクラシーを学び始めたばかりの方から一般的によくお聞きする誤解は以下です。誤解と真実を書いています。
1)何でも自由にやっていい
ロールごとに仕事の領域を定めています。変更は可能です。担当するロールの目的実現のために行動するという約束事があります。
2)給料は自分で決める
該当するロール(例「給与決定ロール」)が給料決定プロセスについて、労務上の規則に沿って、進めていきます。
該当するロールがなければ作ります。ロールの判断の結果、給料を自己決定とすることもできますし、委員会方式等の他の選択をすることも可能です。
3)あらゆる階層がない
役職という階層はないですが、目的を実現するための様々なロールが入れ子構造になっています。そのため、「目的」という階層はあります。
4)経営者は何もしないで手放すのみ
経営者もロールを担当できます。例えば「将来の構想を考える」等の視野の広いロールや、外部的に「組織の顔」として必要なことや法的な対応(金融機関対応、危機対応、人事労務対応、会社法関連対応等)で必要なことがあれば、ロールを作って担当することが可能です。
何もしないことを選択する場合は、ロールを担当しないことになります。一般的には、会社法含めた法律に準拠している必要があるため、通常は、法的な対応に関連するロールは経営者も担当していることが多いです
5)ミーティングが大変
新しいスポーツに取り組むようなもので、最初は大変に感じられる方が多いです。
数カ月~半年ぐらいで慣れると楽になってきます。さらには、ミーティング自体もスラック上で完結できるので、習熟度合いによって、ミーティングの回数を減らすことが可能です。
6)役割(ロール)の記載を厳密にしないといけない
ロールの目的や仕事内容は、他のロールと重複していないことが必要です。構成メンバーの能力差異があるため、文章で長く書きすぎると他のメンバーがついていけなくなることがあります。
ロールの粒度も自組織の特徴に合った程度にすればいいです。ミーティングで変更もできます。最初から担当するロールの数が多いと混乱する場合には、ロールの粒度を調整して、ロールの数を少なくすることもできます。
7)日本に合っていない
安易に導入するのではなく、「今、何が組織のニーズなのか?困り事なのか?」から始めるのがいいです。
例えば、「ISOで定められているように役割分担表は作っているが、実態に合っておらず何も役に立っていない。そのため役割分担の実用性や更新性を高めたい」であれば、ホラクラシーを活用して、若干のアレンジをすれば解決はできます。役割の明確度合いは現組織にフィットしていれば良いです。
ホラクラシーを導入するのではなくて、組織の課題解決に合っていることから活用する視点が大切です。
8)自立したメンバーしか使えない
適応のハードルをメンバーの状況に合わせていけばいいです。専門的には、メンバーの発達段階や能力ラインに沿って対応していきます。ホラクラシーは「文章作成能力」、「意見伝達能力」、「全体俯瞰能力」等が高い方が取り組みやすいという特徴があります。
そのため、例えば、ロールの定義を長くし過ぎないで、文章作成能力のハードルを下げることや、テンションを伝えるときに明晰さを求めすぎない、とりあえず話してみることを許容することでハードルを下げることができます。
能力ラインの高い方が相対的に低い方を許容する気持ちが大切です。総じて、ちょっとずつ学んでいこうという気持ちで取り組むことをお勧めします。
2-2.ティール組織との違い
ホラクラシー組織とは、フレデリック・ラルー氏の書籍『ティール組織(英治出版)』に記載されている通り、Holacracyを活用している組織のことです。ティール組織の一形態となります。
ティール組織の根底には、組織を「生命体」、「リビングシステム」として観ている世界観があります。世界観の実現方法は無限にあるため、ティール組織では、100組織あれば、100通りの方法があるという考え方です。
ティール組織については、こちらの記事をご参照ください。
ホラクラシー組織のユニークさは、組織のOS(権限と責任の所在や運営方法等)について言及する約束事(フレームワーク)があり、かつ、その約束事が世界中のホラクラシー組織のメンバーが参加できる形で、定期的に更新されているという点にあります。
ティール組織の中でも、フレームワークを持っている組織は多くありますが、組織を越えて、集合的に更新できることはホラクラシーの特徴です。
コラム:Holacracy Constitution(ホラクラシー憲章)
Holacracyでは、約束事(フレームワーク)のことをHolacracy Constitution(ホラクラシー憲章)と呼んでいます。ホラクラシー憲章は、組織のオペレーティングシステム(権限と責任の所在や運営方法等)について記載しています。
ホラクラシー憲章に記されている例としては、次のものがあります。「人ではなくロールに権限と責任があること」や「誰もがホラクラシー憲章で定めることを遵守すること」等が記載されています。
一方で、ホラクラシー憲章のような組織のOSに該当するものを盲目的に信じることは、実は「答えに執着」したり、「前例主義」といった「過去からの学習」に戻ることを引き起こします。
実際、残念ですが、ホラクラシーを「導入」という世界観で捉えたことによって、そういった状況にある組織も散見されます。
ティール組織の文脈でいうと、神話的合理性や合理性を過度に求める、アンバー&オレンジの世界観で見ていることになります。
実存的変容が始まる「グリーン&ティール段階」では、現実を盲目的に信じるというよりは、「健全に疑える視点」が不可欠であるため、盲目的に信じるという姿勢には慎重になった方がいいと思います。
この点でも、ホラクラシーに「答え」を求める「導入」ではなく、あくまで「手段」として「活用」する視点が欠かせません。
2-3.企業実例
沖縄にあり「うつ症状で悩まれている方達の仕事復帰サポートをしている」株式会社BowLでは、2018年の12月にHolacracy(ホラクラシー)を活用し始め、約1年半経過しています。
ホラクラシー実践前の状況は以下のようでした。
・個を整えるという意味でNVC(非暴力コミュニケーション)やマインドフルネスを実践していたので、それぞれが個の内面を扱える組織風土を作れていた。
・全メンバーが「組織のビジョン(ありたい姿)」に共鳴して働いていた。
・組織内の権限委譲を進めた。ただ、その結果、合意形成の多さに混乱が生まれつつあった。合宿で何時間も話をするが決まらないため、みんなが次第に疲れてきていた。
・自主経営の視点では、賞与の投票制を実施。その結果、後輩に抜かれた先輩が悔しい思いをするなど、不本意な状況も生まれた。
→メンバーが自主経営できる状態を志向する中で、ホラクラシーに出会う。ロールへの権限分散により、合意形成の罠(グリーン組織の罠)を越えうる可能性を感じ、使ってみることになった。
ホラクラシー実践後、以下のような変化が生まれています。
・最初の数カ月は、ミーティングの方法がわりと自由度の高い対話形式から、ガチっとしたプロセスに変わったため、不慣れなことから葛藤も多かった。今なお、進行形の部分もある。
・思ったこと(テンション)も挙げられない。これでいいのかなという不安があった(テンションとはロールが感じる理想と現実の間のひずみ)
・しばらくして、ロールへの権限分散に慣れてくるメンバーが生まれ始めた。ロール名で呼び合うため、運営上の話をする際に、組織から個人名がなくなっていった。
・各ロールからテンションもあがってくるようになった。ロールの仕事内容(アカウンタビリティ)も変化に即して変わっていった。
・ロール(仕事)への責任感が高まっていくことを感じた。これまでの決まらない状況から次第に、ロールが責任をもって決めて行った。(ホラクラシーでは、各ロールが最終的に意思決定するため、合意形成は不要)
・今まであまり発言をしなかった経験年数の浅い、若いメンバーも、しだいに声を出し始めた。メンバーが言いたいことを言うようになるにつれて、発せられるテンションの数も増えていった。
・ロールからのテンションにお互いに寄り添うということがしっくりと来ている。つまりロールが孤立するのではなく、適切にテンションを扱うことでロール同士がサポートし合うことが可能になった。テンションとして挙げにくい個人的な不安や悩みがあれば、カフェなどでゆったりと聴ける機会をつくった。
・ホラクラシーを続けていくなかで、次第に安心安全に意見を出せる場になっていった。
・新型コロナウイルスへの対応も、トップダウンの指示ではなく、ロール同士が主体的に動き合うことで、大きな混乱を生じさせることなく、支援スタイルのオンライン化という大胆な経営転換にも柔軟に適応する組織になっている。以前にもまして、組織のレジリエンスが向上したと実感している。
(事例からの考察)
成果だけを追求することの矛盾(オレンジ組織の矛盾)、権限委譲からの合意形成に疲れることの経験(グリーン組織の罠)。こういった経験を経ていることが重要と感じます。
事前に「個人の内面を扱える風土」と「ビジョンへの共鳴」があったのは素晴らしいことです。
ホラクラシー活用後も、試行錯誤しながら、うまくいかない部分を、お互いにサポートし合えています。
業務の効率化といったような機械的な側面だけで捉えていない、「人間らしいあたたかい部分」を感じました。
また、コロナ状況下において、トップダウン的な判断をする組織も多い中、「ロール同士が動きながら判断できている」というのは、希望になると感じました。
2-4.運営方法(簡易版)
ここではページの都合上、簡易に箇条書き程度に紹介するにとどめています。
概要に関心のある方はこちらの記事の6-2「【ホラクラシー組織】でのセルフマネジメント」をご覧ください。
(最初の組織デザイン)
①組織全体のパーパス(目的)を設定
パーパスを考える際の問いを以下に記載しています。パーパスは進化していくため、定期的にパーパスについて対話する時間が大切です。進化していくタイミングで更新をします。
【実践メモ:パーパスを考える際の問いの例】
- この組織の可能性が最大限に発揮された時に、この組織が世界に貢献したいことは何ですか?
- 世界がこの組織に実現して欲しいと渇望していることは何ですか?
- もし、世界からこの組織が失われてしまったら、世界は何を失ってしまったことになりますか?
②現在の組織で行っている仕事を全て、ロール(仕事の役割)として設定
③ロールに目的を設定し、目的を実現するためのアカウンタビリティ(継続的な行動)を設定
(初期デザインの後)
①ロールを担当するメンバーがロールリードとして、権限を執行し、ロールの目的を実現していく。ロールを担当するメンバーは適正や希望等を踏まえて決めていく。
②毎週1回1時間、運営上のベクトル合わせとしてタクティカルミーティングを行う。
コラム:【実践者向け】ファシリテーターの重要な役割①
「上司への承認やコンセンサスを求める状態」から「ロールへのパワーシフト(Power shift)」が発揮されていることが大切です。初期の場合、ロールへのパワーシフトが成されないシーンが多くなるため、適切に「ロールが権限と責任を持つ」ことを、グラスフロッグを活用して、組織内にリマインドすること(Differentiation)が重要です。
また、ファシリテーターが、テンションの背景にあるニーズをしっかりと扱い、ミーティングのアウトプットとして表現することをサポートする姿勢(Support)が不可欠です。一方で健全に悩みながら、学びを深めていく姿勢(half meeting/half workshop)も大切で、絶妙のバランスでメンバーが参加できるよう、ファシリテーターがメンバーに働きかけること(Involvement)が重要です。
③毎月1回、構造上のベクトル合わせとしてガバナンスミーティングを行う
コラム:【実践者向け】ファシリテーターの重要な役割②
提案者の提案背景のニーズをしっかりとファシリテーターが聞くことが大切です。ニーズには、ロールのニーズと個人や関係性のニーズがあります。
ファシリテーターはニーズを把握しておく一方で、提案内容を早期に吟味することはせず、プロセスに委ねる姿勢が大切です。もし、提案内容がホラクラシー憲章に沿わない内容であれば、反対意見を伝える場面で、情報として場に伝えるのが良いです。初期は、こういった場面は多く、全メンバーの学習の機会となります。
反対意見のテイスティングプロセスでは、反対意見の検証という敵対的な姿勢ではなく、反対意見は異なる観点で見た貴重な情報であり、歓迎する姿勢が大切です。ファシリテーターが率先して、歓迎する姿勢を体現していきます。
3章 これからのホラクラシー
日本でも事例にあるように、少しずつホラクラシーを実践している組織が増えてきている中で、最近、ホラクラシーの運営スタイルが、私が学び始めた数年前から変化をしてきています。
具体的には、数年前の機械的な運営に傾倒していたスタイルから、より人間らしい運営を実現していこうと変化しています。テンションを聴く際にも、ロールとしてだけではなく、個人としてのニーズがあれば、それも扱うようになっています。
ホラクラシーの運営ハードル自体は上がるものの、機械的なスタイルの弊害を越えて行こうという思いを感じています。こういった背景から、世界中のホラクラシーメンバーの対話を経て現行の「ホラクラシー憲章4.1」から「ホラクラシー憲章5.0」へと試行段階に入っています。
「ホラクラシー憲章5.0」では表層の変化よりも、背景にある「人間らしい温かさ」や「曖昧性への許容」がポイントになります。専門的な言葉になりますが、より統合的(インテグラル)な方向へと進化しています。
ホラクラシーを提供しているホラクラシー・ワン社でも、経験豊富な実践者にコーチングの実地試験の上、コーチ認定を出していますが、単にホラクラシー憲章に沿って機械的な運営をしている方には、コーチ認定を出さない状況に既に変わっています。機械的ではなく、人の段階に応じた多様なニーズに寄り添いながら統合的に運営できるか否かを注視しています。
個人的には当初からそう望んでいたため、嬉しい進化ではありました。まさに、グリーン・ティール段階の意識状態をコーチに求めるようになりました。これは、ホラクラシー・ワンの方で、経営者や実践者向けに成人発達理論をベースにしたプログラムも提供していることにも関係しています。
コラム:コミュニティー型組織への活用
ホラクラシーを通常の組織だけではなく、共通の目的で集まるコミュニティー型組織に活用する流れも生まれています。例えば、兼業やボランティア、フリーランスの方が集まるようなコミュニティー型組織です。当社(Natural Organizations Lab)もそういったコミュニティー型組織になります。
ホラクラシーの特徴の「頭のベクトルの合いやすさ(頭の循環)」をそのままに、「心や身体の循環」がさらに高くなるようにデザインしています。ロールリレーションシップの良さと、「メンバー同士の繋がり」や「メンバー個人の興味の探求」といった側面も並行して高まっていくような仕組みです。Withコロナ下においては、通常の組織においても、「頭に加えて、心や身体の循環」を高めることが一層大切になってくると感じています。
以上のような背景もあり、単純にホラクラシーを「導入」しようという文脈ではなく、「まずは組織のニーズは何だろうか?」を問うことから始めることが望ましくなっています。
そのため、ホラクラシーを活用する前に、例えば、以下の視点で自組織を観察してみると良いです。テレワーク下において、以下の視点は重要性を増しています。
4章 まとめ
前章で述べた自組織の観察の視点がOKであれば、ホラクラシーを活用できる土壌があるのではと考えています。もし、NGが多いのであれば、ホラクラシーの前にできることから進めていくのが良いと思います。
以上、本記事では、ホラクラシーの概要から、メリット、デメリット、よくある誤解、事例などをお伝えしてきました。
まだまだ、未知で不可解なホラクラシーだと思いますが、理解が進めば嬉しいです。ぜひ、できることから進めてもらえたらと思っています。
本記事が読者の皆さまのより良い組織経営づくりの一助となれば幸いです。